帝国データバンクは、「焼肉店」の倒産発生状況について調査・分析を実施。調査によると、焼肉店の倒産数が年間最多を更新した。リリースを紹介しながら焼肉店を囲む経営環境をリポートする。
■昨年同時期の件数より倍増以上
2024年に発生した「焼肉店」経営事業者の倒産件数(負債1000万円以上、法的整理)が、9月までに計39件に達した。2023年同時期の16件から倍増以上となっただけでなく、2019年に記録した26という通年件数を7月末時点で上回って年間最多も更新。もっとも記録されてるいるのは負債1000万円以上であるため、カウントされていない個人営業などの小規模店の廃業を含めれば、この数字以上の店舗が市場から退場しているだろう。
廃業の背景にあるのは「価格の高騰」とみられる。
焼肉店を巡る2024年の経営環境は、使用される食材が軒並み高騰する一方でメニューの値上げが難しい「我慢比べ」の状態が続いている。円安などを背景に米国産などの輸入牛肉は価格高騰が止まらず、ロイン・かた・ばらの部位各1kgにおける輸入牛肉の原価平均は、月平均で2024年は20年比1.7倍に上昇した。加えて、近時はサラダなどで提供する野菜類の値上がりも目立ち、キャベツなど焼肉店で採用の多い主要な野菜価格は同1.3倍に高騰している。
「焼肉店」の倒産動向(2024年1-9月)
原材料の価格高騰に苦しんでいるのは焼肉業界にだけではない。飲食店全体を苦境に追い込んでいるが、焼肉業界特有の要因がさらに追い打ちをかけていると帝国データバンクは分析している。
ただ、他の外食メニューに比べると客単価の高い焼肉では、物価高騰による節約志向の高まりも背景に、客離れを警戒して「これ以上の値上げがしづらい」など、大幅な価格転嫁が難しい。その結果、大量仕入れなどの低コスト運営を強みとしたリーズナブルな価格設定が可能で、ファミリー層などの支持を集める大手チェーン店と、厳しいコスト競争に耐え切れない中小零細店での格差が広がっている。実際に、2024年に倒産した焼肉店のほとんどが個人店や資本金1000万円未満の企業だった。
「焼肉店」の倒産動向(2024年1-9月)
今後も円安基調が続くため、入牛肉などの値下がりはあまり期待できそうにない。しかも、人手不足による人件費高騰も足かせになるだろう。そのため、2024年の焼肉店倒産は年間で初めて50件を超える可能性もある、との見解でリリースは結ばれている。
◎調査方法
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
※「霜降り、赤身に関する調査」に関する記事は以下より
コメント