京都市営地下鉄烏丸(からすま)線と東西線が交差する烏丸御池(からすまおいけ)駅周辺は、博物館やお洒落な店舗が多い京都市内でも人気の地区だ。周辺はホテルの開業ラッシュもあり、地域の賑わいには観光客も加わる。そんなエリアにたたずむ『ビストロ ルラション』を訪ねた。
■プリフィクス中心のメニュー設計
開店は2001年。いまでこそ活気のある店の界隈だが、開店当時は街の中心からはやや外れていたという。それでも店主の岡本俊介さんがその物件を選んだ理由は、住まいから近く家賃も予算内だったから。近隣の人に、フランス人が普段食べているような気軽な料理を提供したいと考えての開業で、店名『ルラション(=リレーション、〈関係〉のフランス語』には岡本さんが目指す、店と客との「関係」への思いがこめられている。
メニューは開店当時からプリフィクス(定食)が中心だ。数種類から選べる前菜にメイン、それにデザートが付いて1人3300円(税込み)か、前菜2品とメイン1品、デザート2品を選び、2人でシェアできるコース5500円(税込み)を選べる。
初期はすべてコース価格に納まるようにしていたが、その後、顧客の嗜好も見極めながら前菜やメインの選択肢に追加料金が必要な料理も加えた。が、客の手が届かないような値は付けない。せっかくの選択肢も、価格のせいで選べなくなるのでは意味がないからだ。
店で提供するワインも、料理とのバランスを考えて3000円から6000円が中心。ブドウの品種や産地、飲みやすさや食事との相性などを見て、味を確かめたものを選んで提供する。


■フレンチらしさを引き出す素材とソースの組み合わせ
料理も時間とともに変化した。近年は輸送網や冷蔵庫の発達で、素材の鮮度が格段に向上している。それに合わせて調理法は徐々にシンプルになっていった。「新鮮な素材に、それほど手を加える必要はありません」と岡本さん。ただ、家庭料理そのものにならないよう工夫を欠かさない。またメインの存在感が薄れないよう、料理とソースのバランスにも配慮。素材の味も楽しめて、ソースがあると一層おいしくなることを意識している。そこにはメインの素材の持ち味を最大に生かすという確かな計算がある。仔羊の料理を例にとると、「仔羊でなく、鴨でも成立する」のなら、それはやっても意味のないと考えているのだ。

■高級化より、お客様との関係性を深めたい
素材と味の足し算や引き算に、細やかな配慮を欠かさない岡本さんだからこそ、この場所にしっかり根づくことができたのだろう。オープンから25年が経ち、開店初期の常連客が連れてきていた子ども世代が、その子どもを連れてやってくるようになった。「どこに行きたい? と子どもに聞いたら、ルラションさんに行きたいって言われて」と言いながらやってくることもあるそう。そんな嬉しいことはないといった表情で、岡本さんは微笑む。
フレンチもイタリアンも高級化が進み、客単価は数万円といった店も少なくない。高級化は目指さないのかと水を向けると、岡本さんは少し考えて答えた。「家族4人でうちに来て、1人4000円としても1万6000円。決して誰もが安いと感じる価格ではないですよね」
価格を上げることは不可能ではないが、それより親世代から子世代に移り変わっても、ずっと訪れてもらえる店でありたい――。突出はしなくとも日常の延長にあって、人々の人生の一部のような店こそが、岡本さんが目指す客との関係のかたちなのだ。

◎店舗情報
店舗名:ビストロ ルラション
住所:〒604-8182 京都市中京区堺町通姉小路下ル大阪材木町687 第2パールハイツ1F
電話:075-213-2570
アクセス:京都市営地下鉄「烏丸御池駅」から徒歩7分
営業時間:ランチ/11:30~15:00(L.O.13:30)、ディナー/17:30~22:00(L.O.20:30)
席数:カウンター7、テーブル8の計15席
定休日:毎週水曜日、木曜日ランチタイム
支払い:各種クレジットカード、各種電子マネー、QR コード決済(PayPayを除く)可
HP:https://relations.gorp.jp/
※「アラカルトにこだわるフレンチ」に関する記事は以下より
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