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果物の専門家が「映える」フルーツサンドに込めた思い(@四ツ谷)


フルーツサンドが静かなブームだが、この店の「映える」シェイプはお土産として重宝と評判だ。果物を長年扱ってきたベテランが自信を持って提供するフルーツサンドの味の裏側にあるものとは。

■フルーツの邪魔にならない生クリーム

 
 いらっしゃい!
 
 フルーツサンドのずっしりとした重さは食材へのこだわりの表れだ。30年以上もフルーツ販売に関わってきた目利きが都の中央卸売青果市場に足を運んで厳選。産地はもちろん、生産者や土壌も調べる。世界に1個しかないフルーツの中でも最良のものをパンにはさむためだ。
 飯塚隆司さんが2021年に開店したフルーツサンド専門店、『trefle』(トレフル)はJR四ツ谷駅から少し離れたエリアにある。商売に適した立地とは言いにくいが、繁盛店は場所を選ばない。
 3年前のオープンがコロナ禍中だったためにテイクアウト形式を採用。持ち帰る間にも新鮮さを保てる生クリーム作りに苦戦したが、フルーツやパンと渾然一体となり、かつ主役であるフルーツの邪魔にならない生クリームを作り上げた。

▲こだわりの食材が詰まったフルーツサンド


 毎日の調理は販売時間から逆算してスタートする。パンに生クリームを塗り、断面に顔を出すようにフルーツを挟んで一度、ラッピング。4、5時間寝かせて成形し、カッティングにかかる。いちごであれば、ハート型の断面が見えるようにし、カット面をきれいに拭いてようやく出来上がる。「すごくきれいに丁寧に作品のようにしないと消費者は選んでくれません」
 商品の原価は4割程度。利益率は高そうだが、他店より低い。作る過程に手間と時間をかけるため、人件費もかさむ。美味しく食べてもらうために消費期限を1日としているため、売れ残りのリスクも高い。

▲フルーツサンド以外のメニューも充実

■100店舗以上に足を運んで研究

 1948年創業のスーパー、丸正飯塚(本社は東京都新宿区若葉)を経営してきた飯塚さんが、小売業撤退を決めたのは平成の終わり。物価の高騰、そして流通や食生活の変化があり、コストと見合わなくなった。魚は35%、酒類は13%、フルーツなら10%程度の粗利しか見込めない。トータルで25%くらいの粗利があっても、人件費や販売間接費を考入れると、そろばんが合わない。
 飯塚さんはスーパー全体を仕切りながらもフルーツを扱うことが多かった。表現方法は変われど、丸正飯塚の店頭を彩ってきたフルーツを次のステージでも扱うことに迷いはなかった。「ナイフを入れるほど劣化するフルーツは素材のまま食べるのが一番」と考え、フルーツサンド専門店を選んだ。
 雇用維持もあり、開店業務に向けたスタッフは50代中盤の4人という顔ぶれ。その4人で全国にある100店舗以上のフルーツサンドを食べ歩いた。

▲ショーケースには季節に合ったフルーツサンドが並ぶ

■地域住民の伴走者として

 スーパー時代よりも数段アップグレードしたフルーツを使った高付加価値商品は口コミで評判となった。贈答用として3000円や5000円のギフトボックスを買い求める客も少なくないが、悩みもある。
 四ツ谷の若葉町出身の飯塚さんは地元に愛着があり、本音をいえばリーズナブルな価格で地域の人々に普段使いをしてほしいからだ。とはいえ価格を抑えるために品質は下げたくはない。ハーフサイズのテスト販売ではハーフサイズが売れると分かったが、ハーフは消費者にとって割高だし、トータルの売上も落ちる。

▲地元を愛する飯塚さん


 店名のtrefleは「四つ葉のクローバー」を意味するフランス語。「採れたてフルーツ」を連想させる響きも持ち、地名とも共鳴する。フルーツの価格高騰もあって悩みは尽きないが、地元のお祭りで子供たちにソフトクリームを配るなどして地域還元も怠らない。
 四ツ谷の若葉町で生まれた古巣スーパーの「生活者の伴走者でありたい」というスローガンを忘れていないのだ。
 
 ありがとうございました!

▲店舗を切り盛りするスタッフの方々

◎店舗情報
店舗名:trefle(トレフル)
住所:東京都新宿区四谷三栄町2-1 第一萬寿ビル1F
アクセス:四ツ谷駅(JR中央線&東京メトロ南北線)徒歩5分
営業時間:1100~1900
定休日:不定
SNS:https://www.instagram.com/trefle_yotsuya(インスタグラム)

※「音威子府そば」に関する記事は以下より

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