皆さんは今までに事業計画書を作成したことはありますか? 長年事業を行っている方でも、日々の仕事で忙しくして、中々事業計画書を作る時間はなかった、という方は多いのではないでしょうか。「そもそも事業計画書を作る意味があるのか?」と思われている方もいるかもしれません。
そうした事業者の方でも、事業計画書の提出を求められることがあります。それが設備投資などのために融資や補助金など外部から資金調達をして行う場面です。こんな時は、新規出店や厨房設備の改装などで一時的にまとまったお金が必要になりますよね。金融機関への融資相談の準備や、補助金活用の検討をすると、いよいよ事業計画書が必要となってきます。そんな時に「事業計画書の書き方を一から教えて欲しい」と相談に来られる方が多いです。
事業計画書を書く前に①ー大前提、融資担当者や補助金の審査員は、あなたの事業について詳しくない
それでは、なぜ融資や補助金申請時に事業計画書が必要とされるのか。今回はそんな「そもそも」という話を、融資担当者や補助金の審査員の立場になって考えてみたいと思います。
事業者の皆さまは何年も事業を続けてきたその道の実践者であり専門家です。創業する場合であっても、過去に従業員としてその業に関わってきて独立するという方が多いので、その場合もやはり専門家です。一方で、融資担当者や補助金の審査員は、その道(=皆さんの事業)の専門家でありません。
何かとてもあたり前のことを書いていると思われるかもしれません。しかし、この「融資担当者や補助金の審査員は、あなたの事業について必ずしも詳しくない」という当たり前の事実を認識することが非常に大切です。
事業計画書を書く前に②ーなぜみんな、あなたの事業に詳しくないのか?? その理由を理解する
要は、融資や補助金申請とは「自分のことを知らない人に、自分のことを説明して、資金調達の相談をすること」ということです。
実は、最初からこの点をきちんと理解して計画書を書くことができる方は、それほど多くありません。中身の話の前に、こうした説明を最初にして「なるほど」と思ってもらうことが、私たち支援者としてはとても大切です。この認識をしておかないと、話をした時に「なぜ、この融資担当者は、自分の事業のことをこんなにわからないんだろう」という想いになりがちです。
これは、例えば、長年飲食業に従事してきた方が、友人の製造業のものづくり技術の話を聞いたとしてもよく理解できないことと同じです。融資担当者も補助金の審査員も、数多くの業種の事業者の話を聞いたり、計画書に目を通したりしていますが、世の中にある全ての産業・事業に精通しているわけでは当然ありません。どちらかと言えば「広く」様々な事業を見ている人たちです。
逆に、個々の事業者の方は「深く」という傾向が強いので、同じ業界の人たち相手であれば細かく言わなくても通じることが、こうした人たちには中々話が通じない。しかし、その人たちを説得して資金調達を実現したい。どうしたらよいか?という話になるわけです。
事業計画書とはあなたの事業を「わかりやすく」伝えるための手段である
このように「自分たちの事業について詳しくないけれど、様々な事業や経営について知見を持っている人たち」に、自分の取り組みを「わかりやすく」伝えるための手段の1つが「事業計画書」ということになります。
相手に自分の意図がうまく伝わらない時に「相手の理解度が足りない」と考えるか、「自分の伝える力が足りない」と考えるか。どちらの考えをするかで、その後の展開は大きく変わります。ぜひ後者の考えに立ち、事業計画書をうまく使えるようになりましょう。
※「中小企業診断士コラム①」は以下より
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