店舗を開業する上で欠かせないのがテナントの確保であり、不動産に関する知識。この連載では、不動産業界で長く活躍するSAWASANが基本知識を紹介する。
■権利金は経費として取り扱い
連載⑪から権利金と保証金を解説しています。定義は以下のようになります。
権利金:賃貸物件の借り手が貸し手に支払う一時金で、契約権を得るための対価
保証金:賃貸物件の借り手が賃貸契約の履行を保証するために支払う金銭で、契約終了後に返還されることが一般的
連載11回でも触れていますが、権利金は敷金や保証金と異なり、契約終了後も返還されません。費用として扱われるため、支払う際には慎重な判断が必要です。そして税務上は、借主側は「繰延資産として計上して契約期間にわたって均等償却」し、貸主側は「返還義務がない場合は、収益として計上」します。
理解しづらい点もあるでしょうが、訴訟案件を通じて理解を深めていきましょう。ただし、権利金の返還請求に関する具体的な訴訟案件は多岐にわたります。権利金の返還を巡る一般的な事例として考えられる状況を今回も紹介していきます。
1.契約解除による権利金返還請求
借り手が入居前に契約を解除した場合、貸主が権利金を返還しなかったため、借り手が返還を求めて訴訟を提起。
2.長期滞納後の退去による権利金請求
借り手が長期間賃料を滞納し、契約が解除されたが、賃貸借契約には権利金の返還に関する明示的な条項があり、返還を求める訴訟。
3.物件の不具合と権利金の返還
借り手が物件の重大な欠陥を理由に契約を解除し、権利金の返還を求める。しかし、貸主は物件を適切に管理していたと主張。
4.権利金の不当増額に関する訴訟
借り手が権利金の支払い後に貸主が契約条件を一方的に変更し、権利金の返還を求めた。
5.一方的契約解除による権利金請求
貸主が特定の理由なしに契約を解除し、借り手が権利金の返還を訴えたケース。

6.権利金と保証金の整理
借り手が権利金と保証金の整理の仕方に疑問を持ち、権利金の返還を求めて訴訟を行った。
7.権利金の消失に伴う訴訟
借り手が入居後に権利金の消失を確認し、貸主に返還を求めて法廷に訴えた。
8.新しい契約への切り替えに伴う権利金請求
借り手が既存の契約を終了させて新規の契約を結ぶ際、貸主が権利金を返還せず、借り手が裁判に訴えた。
9.変更された契約条件についての争い
貸主が契約更新時に権利金を大幅に引き上げたため、借り手がそれに異議を唱え、権利金の返還を求める訴訟に至った。
10.相続された権利金返還請求
借り手の死亡後、相続人が権利金の返還を求めたが、貸主が相続人の請求を拒否、法廷で争うこととなった。
これらの事例は権利金の返還に関連する一般的なものです。具体的なケースや法律の適用については専門的な法律相談が必要です。実際の判例を知りたい場合は、専門の法律書籍や判例データベースを参照することをお勧めします。
◆著者の取得資格◆
国土交通大臣、登録証明事業(3)第28034号、不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、宅地建物取引士(埼玉)第045713号、FPファイナンシャルプランナー第30220347号、賃貸不動産経営管理士(2)第020666号

※SAWASANの連載12回目コラムは以下より
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