さまざまなリテール企業（小売）が競わなければならないのは同業種だけとは限らない。売れて地位を確保すれば、類似品や偽物への対応策を考えなければならない。事業規模にかかわらず、そうした事態に直面することは多々あるだろう。今回は、成長を続けるアパレルメーカーの対抗策をお届けする。
🔳偽物を競うように紹介するＺ世代
いらっしゃい！
『ルルレモン・アスレティカ』（lululemon athletica）というカナダ発のスポーツ衣料小売業社を知っているだろうか？ 1998年の創業以降、順調に成長を続け、2022年度（2022年2月～2023年1月）には売上高が前期比29.6％増の約81.1億ドル（約1兆1354億円）、営業利益は同99.6％の約13.2億ドル（約1848億円）を記録した。
順調な経営状況に思われるが、「デュープ」との熾烈な戦いを余儀なくされている。デュープとは「そっくりなコピー商品」を意味する（フェイクのほうが日本人には馴染みがあるかもしれない）。安価なデュープに顧客や潜在顧客を奪われている可能性は否定できない。例えば、ルルレモンの正規品、『アライン・レギンス』（ヨガ用のシリーズ）が98ドル（1万3720円）であるのに対し、デュープはたった20ドル（約2800円）なのだ。
しかも最近はデュープに対する人々の感覚も変わりつつあるようだ。
かつては「偽物を持っていることを恥じる」、あるいは「偽物だとは分からないようにする」というのが一般的だった。しかし、Z世代を中心に「デュープを発掘し、見せびらかす」というトレンドが見られるのだ。
TikTokユーザーのアリアナ・ヴィターレがルルレモン製品とそっくりなデュープの紹介動画を投稿すると、この投稿は95万5000超のビュー数を稼ぎ出した。ルルレモンの関係者によれば、「#lululemondupesというハッシュタグは1億5000万回以上も再生されている（1億8000万回以上という説もある）」そうだ。デュープに対する興味や需要の表れだろう。関心を引くからだろうが、『ティーン・ヴォーグ』誌には「アマゾンで買えるルルレモンの偽物ベスト11」というタイトルの記事さえ掲載されている。
2026年までに売上高を倍増させるという意欲的な目標を掲げるルルレモンにとってデュープ退治やデュープ対策は喫緊の課題と言っていい。
🔳期間限定のユニークなイベントでアピール
2023年の5月6～7日にかけてルルレモンが開催したイベントはユニークだ。
ロサンゼルスのセンチュリー・シティ・モールにある店舗で行なわれたのは『アライン・レギンス・デュープ・スワップ』。ルルレモン製品を模したデュープを持参した人はなんと、正真正銘のアライン・レギンスとデュープを交換してもえる（1人１足限定）。
このキャンペーンのポイントは、デュープを世の中から消し去るという対処療法ではなく、出口と言うべき消費者に直接、「優れた点を理解してもらって買わないほうがいい」と訴求した点である。いつもはデュープを手に取り、ルルレモンから離れた生活を送っている消費者に呼びかけることを選んだと言っていい。
このイベントは危険なギャンブルでもある。デュープと引き換えにリアルなルルレモンを手にして履いた消費者に「デュープで十分じゃない」と思われ、そうした思いをSNSで拡散されたならば……。大金をつぎ込んで自社を窮地に陥れることになる。
ルルレモンの自信とリスクを天秤にかけたら、自信が勝ったのかもしれない。
同社のデボラ・ヒュンは言う。
「（ルルレモンの製品を体験すれば）他社のレギンスには戻れないと信じています」
あるいは、同様の比較はSNS上で徹底的に実行されてきたと考えたならば、今さらリスクは存在しない。そして報道やSNSでの拡散によるイベントのインパクトを考えれば、リスクなど取るに足らないものとも言える。しかも、ブランドに忠誠を誓っていた人々は「自信にあふれたキャンペーン」を目にしてさらなる忠誠心を掻き立てるだろう。
なお、引き取られたデュープは繊維のリサイクル企業を通じて新たな役割を与えられるとルルレモンは発表している。なんとも完成度の高いキャンペーンだ。
ありがとうございました！
参照：
https://www.fastcompany.com/90895043/lululemon-dupes-align-tiktok-lululemondupes
https://www.statista.com/statistics/291238/net-revenue-of-lululemon-worldwide/#:~:text=In%20the%20financial%20year%20of,dollars%20in%20net%20revenue%20worldwide.
https://talking-english.net/fake-counterfeit-forgery-knock-off/
※SEO改善に関する記事は以下より
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