飲食店を開業するためには、ただ料理が得意というだけでは難しいのが現実。おいしい料理を作ることはもちろん、店舗の運営、スタッフの管理、収支の把握、集客方法etc… 経営者として必要な知識・スキルを幅広く学ぶ必要があります。
本記事では、これから飲食店を始めたい方や、経営について体系的に勉強したい方向けに、飲食店経営において知っておきたい基礎知識を4つの視点から解説していきます。
飲食店経営に必要なスキル~まずは飲食店経営の全体像を把握する~
飲食店の経営においては店舗運営だけでなく、人材育成や集客施策、数字の管理に至るまで幅広い対応が必要です。まずは飲食店経営の全体像を把握し、どんな役割が経営者に求められているのかを明確にすることが必要です。
経営者に求められる視点とは?
飲食店の経営者は単なる料理人や店長ではなく、「ビジネスオーナー」という立場です。そのため、日々のオペレーションだけに目を向けるのではなく、店舗運営全体を俯瞰した視点が求められます。具体的には、
- 売上や利益の数字を把握すること
- 経営戦略を創ること
- スタッフを育て、モチベーションを高めること
- 顧客ニーズを理解し、リピーターを生む商品やサービスを考えること
このような視点をもって、日々の店舗の運営に当たることが必要です。特に近年ではSNSの利用促進によりトレンドの周期が速くなり、経営環境はよりシビアになってきてますから、お店を取り巻くデータの分析やトレンドの把握も欠かせません。
経営者は常に“学び続ける姿勢”が求められ、勉強を継続して行うことが成功への第一歩です。
店舗運営・人材管理・マーケティングなどの役割
さて、冒頭お伝えした飲食店経営の全体像についてですが、経営者の飲食店経営における主な役割は、大きく分けて「店舗運営」「人材管理」「マーケティング」の3つに分類されます。
まず店舗運営については、仕入れや在庫管理、衛生管理、サービス品質の維持といった、日々の業務を安定的に回すことが求められます。これは飲食店を始めようとする皆さんであれば、「飲食店経営=これら」と考えるほど、おおよそ想像のつく内容かと考えます。
人材管理では、スタッフの採用・教育・評価が中心となり、職場の雰囲気作りや働きやすい環境の整備が重要です。また、マーケティングは集客の要となる部分で、ターゲット層に合わせた広告戦略やSNS活用、リピーター対策などが含まれます。このメディアで過去に何度もお伝えしているのが、この部分ですね。
これらの役割は一つも欠かすことができないことだと考えます。これ、実は会社の組織運営も同様で、筆者もこれらの対応に長年ずーーーーっと、頭を悩ませ続けてきました。経営者が全体を理解し、その時々の状況に応じてバランスよくマネジメントすることが、長く生き続ける・愛される店舗を作るカギとなります。
店舗運営のポイント~飲食店の利益を生み出すお金の流れ(収支構造)を理解する~
さて、先に挙げた「店舗運営」「人材管理」「マーケティング」の3つのうち、まずは店舗運営のポイントから。飲食店を継続して運営していくには、「儲けの仕組み」を理解することが欠かせません。ここでは、飲食店における基本的な収支構造と、利益を生み出すための数値管理のポイントについて解説します。
売上⇔支出(原価・人件費・家賃など)の収支バランスを理解する
飲食店経営で基本となるのが、「収支バランス」の理解です。どれだけお客様が来店して売上があっても、支出がかさめば利益は残りません。主な支出には、食材にかかる「原価」、従業員に支払う「人件費」、そして毎月発生する「家賃」などの固定費があります。
一般的に、飲食店では原価率は30%以内、人件費は25~30%、家賃は売上の10%以内※が理想的とされています。これらの費用を把握しつつ「売上の何%を使っているか」を常に意識することで、適切な収支バランスが見えてきます。
特に飲食店経営においては、季節や曜日による売上の波もあるため、月ごとの収支をグラフ化するなどして「どこで売り上げが上がる・下がるのか」「どこで無駄が出ているのか」を見える化しておくこと、そして常にそれを確認することが大切です。収支構造の把握は、儲かる店と赤字店を分ける重要な要素なのです。
※参照:飲食店ドットコム「飲食店の利益率を上げるには? FLコストや経費の見直しポイント」
スタッフ育成とチーム作り~飲食店の成功に欠かせない「人」をいかに創るか~
飲食店において、お客様との接点を担うのは「スタッフ=人」です。スタッフの接客レベルが、店舗の評判やリピート率を大きく左右します。またスタッフの働きやすさやモチベーションの維持は、お店へのスタッフの定着に大きく関わります。ここでは、育成やチーム作りの基本を筆者の会社経験なども交えつつ解説します。
教育マニュアルを整備し接客クオリティを平均化する
店舗運営においては筆者がパッと思いつくだけでも、オーダー、料理提供、レジ対応、クレーム対応etc… やるべきことは多岐にわたります。そのすべてを都度都度、口頭で伝えて教えていくのは、手間もかかる上、抜け・漏れも発生しやすく、結果として時間がかかる一方でスタッフ育成が進まない、という結果に陥りがちだと考えます。
これを解決するのが、教育マニュアルです。先に挙げた、オーダー、料理提供、レジ対応、クレーム対応など、一連の業務をそれぞれドキュメント化しつつ標準化することで、誰が担当しても一定のクオリティを維持できるようになります。
筆者の会社での組織運営の経験でも、このマニュアル。整備するのは非常に大変なのですが、それにかけた時間は人材を採用したあとにおつりが来るほど帰って来る、という印象。人材教育にかかる時間が、採用した人材分減り、かつ業務レベルも一定量担保されることで、その後の業務を劇的にスムーズなものにしてくれます。
「人」を長く定着させるコミュニケーション~日々の会話~
上記のマニュアル等でせっかく育成した人材も、すぐにやめられてしまっては元も子もありません。特に昨今は人材獲得競争がし烈になっており、そもそも人材を獲得すること自体が困難です。
筆者の経験上、特に重要なのは「日常的なコミュニケーション」。業務中の声かけやちょっとした雑談、業務終了後の労いなど、小さな積み重ねが本当に大事です。やはり、スタッフから見て上司と気軽に会話できる環境というのは、働きやすさに直結していると考えます。
その上で、さらにスタッフの話に耳を傾け「なるほど!」という意見については、その気持ちをまず伝えつつ、店舗の運営に反映していく。こうした積み重ねを続けていくことが、人材の定着に寄与していくと考えます。
(それでも、やめてしまうときは辞めてしまうんですけどね…涙)
店舗のマーケティング~認知・集客につながる宣伝方法とリピーター対策~
あなたがどれだけ美味しい料理を提供していても、それが認知され、集客につながらなければ、売上にはなりません。まずは新規のお客様を呼び込み、さらにリピーターへとつなげるために、飲食店経営において基本とも言えるマーケティング手法をご紹介します。
オフライン・オンライン双方活用した集客を
飲食店の集客は、「オフライン」と「オンライン」の両面からのアプローチが重要です。
オフラインでのマーケティングと言えば、チラシ配布・駅前でのクーポン配布・近隣企業への営業活動など、地域に密着した施策が効果を発揮します。特にランチタイムやオープン記念時期には、手軽な価格と明確なアピールポイントを前面すなどすると集客効果が高まります。
一方、オンラインでは、食べログやぐるなび、ホットペッパーグルメなどのグルメ媒体への掲載はもちろん、公式HPやLINE公式アカウントを活用することで、最新情報やクーポン配布が可能になります。またGoogle検索結果やGoogleマップに表示される「Googleビジネスプロフィール」の充実も必須です。最新の営業時間・写真・口コミ対応などをこまめに更新することで、信頼性と検索上位表示の可能性を高められます。
このように、オフラインとオンラインの両軸でお客様にアプローチし、認知・来店・再来店という流れをつくることが、安定した集客のカギとなります。
SNS運用・Googleビジネスプロフィールの活用法
インスタをはじめとするSNSやGoogleビジネスプロフィールといったツールは無料で始められること。かつ継続的に運用することで情報が蓄積され、それが集客の期待値につながる集客ツールです。手間はかかりますが、今や飲食店経営に不可欠な存在となっています。
SNSは、飲食店の“今”をリアルタイムで伝える有力なツールです。写真や動画を使うことで料理・店舗の雰囲気を直感的に伝えることができ、結果として集客への期待値向上につながります。
Instagramでは、「#地名+ランチ」「#エリア名+カフェ」などの地域ハッシュタグを活用すると、その地域にいる新規顧客となりそうな潜在顧客の目に止まりやすくなります。また、ストーリーズ機能で「本日の限定メニュー」や「混雑状況」などの情報を発信することで、来店のきっかけを作れます。
Googleビジネスプロフィールでは、営業時間・定休日・混雑時間帯・写真などを定期的に更新しましょう。さらに、口コミには必ず返信することが重要です。ポジティブな評価には感謝を伝え、ネガティブな声にも誠実に対応することで、他のユーザーにも好印象を与えます。
まとめ
飲食店経営は経営スキルを持つ者が勝ち残りやすい時代へとシフトしています。本記事では、経営に必要な視点・収支の考え方・人材育成・集客という4つの基本をお伝えしました。
はじめは難しく感じるかもしれませんが、ひとつひとつ丁寧に実践することで、飲食店経営の地盤は着実に強くなっていきます。これから開業を考えている方、すでに経営しているが壁に直面している方にとって、この記事が一歩踏み出すヒントとなれば幸いです。
◆著者プロフィール◆
SUKESAN/著名メッセンジャーアプリの立ち上げに携わるなど、多くのWEBサービスの立ち上げからサービス成長までを担ってきたプロデューサー。WEB業界歴は20年以上。今は住まいを台湾に移し新たなビジネスの可能性を模索中。趣味:ロードバイク

※SUKESANの連載コラムの前回はこちらから
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