京都市中京区釜座(かまんざ)は、京都府庁や文化庁などの公的な施設が多い落ち着いたエリアだ。しかし付近を通る丸太町通(まるたまちどおり)は京都市内の主要道路の一つであり、交通量はかなり多い。2025年3月、『ritorito』はそんな丸太町通に面してオープンしたボタニカルカフェとコミュニティスペースだ。
■働く女性が求める2つのテーマ
1階の明るいカフェは「ボタニカルカフェ」の名の通り緑が多い。店名の『ritorito』(りとりと)は、心身をリフレッシュして自分と向き合う時間を過ごす旅を意味する「retreat(リトリート)」に由来しており、思わず深呼吸したくなるような雰囲気に来店者は包まれる。
1階のボタニカルカフェは、多忙な現代女性を主要ターゲットとし、安らぎとリラックスを提供する空間。なるほどメニューには、手作りドレッシングを使う野菜中心のサラダやスープなど、心と体に優しいものばかりが並ぶ。一方、1階にある物販スペースや2階のコミュニティスペースは「楽しく試せる」や「人とのつながりや高め合い」がテーマ。小売事業者やクリエイターに、自社の商品やサービスを気軽に試せる場所としてスペースを提供する。コミュニティスペースに併設されたレンタルスペースは、利用者が自身の商品や作品を持ち込み、教室や展示、販売などに利用できる。

■事業者の方のお悩み解消がカギ
『ritorito』のオーナーは中小企業診断士の登尾源一郎(のぼりお・げんいちろう)さん。店舗の運営では、コミュニティ・デザイナーの杉原惠(すぎはら・めぐみ)さんと協働している。登尾さんは、仕事を通じて出会った個人事業主や中小企業経営者の多くが、「金銭的、場所的、時間的な制約から、やりたいことのすべてを実現できていない」という悩みを抱えていることに気づいた。
どうすればこの課題が解決できるのかを考えたことが、『ritorito』の開業につながった。飲食業の人には新メニューのテストマーケティングを提供し、物販業であればテスト販売の場として使ってもらう。コミュニティスペースでは、教室事業のトライアルなども可能だ。コミュニティスペース設置の背景には、利用する事業者同士がつながることでさらなるシナジーが生まれる可能性があるのでは、という期待もあった。

■開店半年で見直した店舗のコンセプトと「あり方」
オープン後、希望する講師やイベントにコミュニティスペースを貸し出していると、教室事業の講師や利用者の世代が徐々に固定化していることに気づいた。『ritorito』が目指す「人とつながり、高め合う場」からの乖離が見られた。危惧した2人は借り手にフィルターを設け、たとえ収益につながりそうでも、『ritorito』のコンセプトに合致しないケースは弾くようにした。講師や参加者を絞ることで、利用者にも『ritorito』の思いを届けるためだ。しかし、選ぶことは店舗の可能性を狭めることにもつながりかねない。微妙な判断にも思えたが、現在は募集するとすぐに満席になる講座も現れるなど、良い効果が出始めている。
「誰でも利用できるスペース」は理想ではあるが、優先されるべきは『ritorito』のコンセプト。「自分たちの目指す空間づくりを優先することで、スペースの心地良さも守りたい」と杉原さんは話す。

■夢の実現をサポートできる空間とは
『ritorito』の開業にあたり、登尾さんがこだわったのは立地と広さ。「観光地に近く、100平米以上の物件」という条件を重視した。「カフェのついで」ではなく、事業の一部として使えるスペースを確保するには、100平米以上の広さが必要と考えたからだ。こだわった甲斐もあり、京都御苑や二条城に近く、1階に16席のカフェ、そして2階に定員12名と6名まで利用できる2つの空間を持てる物件が見つかった。
今のところ、コミュニティスペースの利用料は時間あたり1,100円(税込)とお手頃だ。採算ラインぎりぎりではあるが、スペースの利用者向けカフェ価格なども用意し、利用者に積極的にカフェを利用してもらうことでカバーしている。「コミュニティスペースの運用実績はまだまだ」だが、人と人がつながり、学び合い、成長できる場を目指す歩みを緩めるつもりはない。カフェや物販、コミュニティスペースという多様な要素を融合させて「独自の価値を高めていきたい」と登尾さんと杉原さんは目を輝かせた。

◎店舗情報
開店年月日:2025年3月10日
住所:京都市中京区丸太町通西洞院東入田中町124-2
電話:075−746−5699
アクセス:京都市営地下鉄烏丸線丸太町駅から徒歩5分
営業時間:0900~2100
定休日:なし
席数:1階16席、2階コミュニティスペース12名、個室6名
支払い方法:現金、各種クレジットカード、電子マネー・各種スマホ決済、各種QRコード決済
喫煙:不可
ペット:可
HP:作成中
※「シェア型書店」に関する記事は以下より
コメント