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作り手と売り手と買い手が応援しあえる青果店(@京都・二条)


近隣の方のみならず食べるものに気を遣う男女やお店のシェフなど、さまざまな人が訪れる青果店。オーガニックや減農薬の野菜、果物を扱う店が繁盛する理由とは?

■途切れない来客

 イチョウ並木が続く京都・御池通(おいけどおり)。平安時代に造営された神泉苑(しんせんえん)から西に約300メートルのところに『マルシェノグチ』がある。明るいグリーンのテントが目印だ。
 店を訪れたのは10月の土曜日。店内が少し落ち着くからと聞いていた昼どきだったが、来客は途切れない。オーガニックや減農薬の野菜、果物を扱うこの店には、近隣の方のみならず食べるものに気を遣う男女やお店のシェフなど、さまざまな人が訪れる。来店するお客様一人ひとりと言葉を交わすことで、名前も買ってくれたものも覚えられると胸を張るのが、株式会社リタマルシェ・代表取締役でマルシェノグチを経営する野口泰亮(のぐち ひろあき)さんだ。

■「お客様と顔の見える関係」を重視

 スーパーに無農薬野菜のコーナーがあり、インターネットでもオーガニックの作物を買える昨今、あえて無農薬や有機栽培の野菜を扱う店舗を経営するのはなぜなのか。この問いに野口さんは、人とのつながりなのではと答える。スーパーは対話不要で商品選びに時間はかからない。しかしマルシェノグチは、持ち帰れるのは野菜だけではない。たとえば「この野菜は今が旬で」など、野口さんの説明とともに買われた野菜は、家庭で調理され「今日ノグチさんでね……」といった話題とともに食卓に並ぶだろう。
 マルシェノグチに来る人は、単に安心安全な野菜が欲しいだけではなく、自分たちに会いに来てくれている人だと野口さんは言う。短くても会話するお客様だからこそ、どの方も「人」として知ることができるのだ。そういった人間関係を求め大切にしている人が、ここには自然に集まってくる。

▲来店した人とは小さなコミュニケーションを大切にしている

■働きながら、学びながら開業へ

 野口さんは福岡県博多市出身。当初はサラリーマンだったが、取引先の青果店社長との出会いをきっかけに野菜を飲食店などに卸す事業の立ち上げを決意した。手始めに妻・忍さんの出身地、京都に一家で移り住み、野菜を中心に多角的な事業を展開する京都八百一グループに再就職した。
 早く仕事を覚え、任せてもらえる立場になるため、仕事を教えてくれる先輩たちに代わってごみ捨てや段ボール潰しを率先して行い、売り場では誰よりも元気に声を出した。そんな努力の甲斐もあり2年目を迎えるころには、近鉄草津店で副店長を務めるまでになっていた。
 創業準備には平日の休みを利用していたが、もともと博多で青果店を営んでいた両親からは「同じ苦労をしなくてよい」と支援を断られもした。それでも2013年4月にマルシェノグチを開店。ただそれは、文字どおりゼロからのスタートだった。
 今でこそ日常的なものからかなり珍しいものまで、店頭にはさまざまな野菜や果物が並ぶが、開店当初は農家さんとのつながりもなく、個人経営の青果店らしさを打ち出せる要素がほとんどなかった。元旦以外、1年364日店を開けても経営は厳しく、閉店後に夫婦でアルバイトに出かける日々。そのような中でも農家さんとのつながりを少しずつ広げ、事業を開始して3年が過ぎたころ、仕入れ先の安定とともに軌道に乗ってきたのだった。

▲店舗奥のキッチンでは総菜やスムージーの販売も

■「マルシェノグチ」というビジネスモデルに

 マルシェノグチの店舗にはキッチンがあり、ショーケースには野菜を使った惣菜が並ぶ。また作りたてのスムージーも味わえる。これらの商品には規格外の野菜や果物を活用しているとのこと。さらに顧客参加型のイベント主催や地域イベントへの出店、近隣のレストランとの送客連携に通信販売と、現在のマルシェノグチは、紹介しきれないほど多角的だ。
 今後取り組んでいきたいことを尋ねると、マルシェノグチのビジネスモデルを売りたいと話してくれた。他地域で青果店をやりたい人に、自分のノウハウを事業モデルとして活用してもらうのだ。創業から軌道に乗るまでの苦労を振り返り「自分と同じ失敗はしなくてよいと思う」ときっぱり。
 野口さんは自身のことを「つなぎ手」と言う。野菜の作り手と、家庭や飲食店で野菜を加工する人の間に立ち、ものや人をつなぐ。単独では生き残ることが難しくても、作物づくりや加工はその道のプロに任せ、自分は販売に専念することでつながれる。販売をやりたい人がいれば、もちろんそれも手助けしたい。これからは野菜を真ん中に、求めている人同士がつながり、互いに応援しあえる関係づくりを深めたい、と野口さんは笑った。

▲マルシェノグチの顔、野口泰亮さんと忍さん

◎店舗情報
店舗名:マルシェノグチ
住所:〒604-8381 京都市中京区西ノ京職司町69 IMPACT IKU 北1F
電話:075-432-7243
アクセス:JR「二条駅」、地下鉄東西線「二条駅」から徒歩5分
営業時間:1000~1900
定休日:毎週日曜日、一部不定休あり
支払い:QRコード決済、各種電子マネー、各種クレジットカード可
HP:https://tsuku2.jp/marche-noguchi

※「人気の会館にたたずむ日本ワイン専門酒場」に関する記事は以下より

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