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変わらぬ美味しさを提供し続ける四ッ谷の『たん焼き 忍』。丁寧に仕上げた茹でたんは外せない!

牛たん料理といえば仙台というイメージだが、東京都にも名店がある。東京都新宿区三栄町にある『たん焼き 忍』もその一つ。茹でたん発祥の地とも言われる同店を紹介する。

🔳古民家の廃材をフル活用した内装

 いらっしゃい!

「開店した時から味は変わらないけど、進化もしていない。ずっと同じことやっているわけだからさ」と店主の上杉徳治郎さん。さりげない一言に自信とこだわりがにじむ。
 JR中央線を四ツ谷駅で下車して三栄通りを7分ほど歩くと、『たん焼き 忍』と刻まれた印象的な看板が目に入る。徳治郎さんと奥様の忍さんがたん専門店を開店したのは1979年。新宿歌舞伎町のレストランを経営していた徳治郎さんが、治安悪化による客離れから「次」を探し始めたところ、仙台に拠点を置く徳陽銀行新宿支店の人から牛たん専門店の話を聞き、実際に店を訪ねた。
「寂しい場所にあるお店は周囲も真っ暗だったけど、いつもお客さんがいる。しかもお客さんが入って来たら焼いたたんとめし、そしてテールスープを提供するだけ(笑)。専門店は場所じゃない」
 そう気づいた。業種を決めると、店の内装にはこだわった。各種店舗を回ってイメージを固め、建築写真家に相談して古材と鉄を使った内装の店を作ることにした。

▲店主の上杉徳治郎さんがこだわった内装も楽しんでほしい


🔳狂牛病にもコロナ禍にも負けずに営業

 メニューはシンプルだが出されるまでに店主のこだわりがある。中でも試してほしいのが一番人気のゆでたん。箸で簡単にほぐれてしまうほど柔らかいたんにワサビを添えて食べると、幸福感が口中に広がる。徳治郎さんは「茹でているだけ」と素っ気ないが、手間は半端ではない。提供する前の晩から火にかけ始め、閉店とともに中断。翌日早朝からまた茹で始める。しめて約7時間。65歳で一線を退いてからは夜の営業時間には立っていないが、「若い人には(早起きは)悪くてやらせられないよ」と日課を守り続けている。
 時間をかけて漬け込む白菜のお新香はたん焼きの付け合わせながらファンが多い。忍では出来合いのものは極力使わない。それは譲れない哲学であり、こだわり。筍の煮物や冷やしナスなど四季折々の野菜を使った料理も好評だ。
「店で提供しているものは自分の好み。幸いにもお客さんがついてきてくれている。自分の嫌いなことはしない。戦時中の記憶もあって麦飯よりも白米が好き。だからたん焼きに定番の麦飯も出さない」

▲上から『ゆでたん』、『焼きたん』、『たんシチュー』


 2000年代前半には狂牛病のために痛手を被った。たんの仕入れ値が5倍に高騰して「やるだけ損」という中でも料理を提供し続けた。近年では新型コロナウイルス禍によって半年近くも店を開けられない時期があったが、従業員の給料を払い続けた。半世紀近くも経営できているのはこだわりの味とスタッフ、そしてお客を大切にしてきた証だ。
「ずっとやってきたことを続けるだけ。みんなには、早くお金を貯めて独立しろって言っている。自分で好きなことを見つけて好きなことをやればいい」
 お客の顔ぶれは時代とともに変わっているが、味にほれ込んだ常連が次の常連を連れてくることでつながっている。店内には、お客とスタッフの幸せそうな笑顔が今もあふれる。
 変わらないことのありがたみも味わえるのが『忍』という店だ。

 ありがとうございました!

◎店舗情報
店舗名:たん焼き 忍
住所:東京都新宿区四谷三栄町14-4 松啓ビル1F
アクセス:JR中央本線四ツ谷駅より徒歩約7分
営業時間:月~金曜日/1700~2230(LO2200)、土曜日/1600~2030(LO2000)
定休日:日曜日、祝日
席数:45席
クレジットカード:利用不可
喫煙・禁煙:全席禁煙
HP:https://tanyakishinobu.com/
TEL:03(3355)6338

※水蒸気焙煎のコーヒーを味わえるカフェの記事は以下より

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