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牛込柳町駅のイタリアン。赤い扉の向こうにはシェフ渾身のパスタが待っている!

新宿と聞くと歌舞伎町に代表されるような繁華街を思い浮かべる人が多いかもしれないが、言うまでもなく、人々の日常生活があり、暮らす街がある。牛込柳町駅周辺も住宅街と知られている。今回は、穏やかな街並みの中にたたずむ『プリモパッソ』を訪れ、オーナーシェフであるタクちゃんに話を聞いた。

🔳コトレッタに導かれて料理人へ

 いらっしゃい! 

 新宿西口駅から都営地下鉄大江戸線に乗って3つ目の駅、牛込柳町駅で下車して階段を上がると大久保通りに出る。二車線道路には車が行き交うが、「ここも新宿区⁉」と思う初来訪者もいるらしい。それもそのはず、不動産紹介サービスでは「閑静な住宅街」と説明されることも多い。そうしたエリアでイタリアンの『プリモパッソ』(Primo Passo)を営むタクちゃんは言う。
「どういう感じで料理を食べるのかな、と考えるようにしています。うまいか、まずいかを決めるのは食べる人だと思うからです」
 会社勤の父を持つタクちゃんがおぼろげながら将来の夢を抱いたのは中学生1年の頃。家族でのイタリア旅行でイタリア料理に魅了された。
「育ち盛りだったので食べてばっかり(笑)。中でも、コトレッタ(ミラノ風カツレツ)はすごく印象に残りました」

▲心を込めて作ったパスタをぜひ、味わってほしい

 高校卒業を控えたタクちゃんは料理の道を歩むことを決意。某有名調理学校の2年制コースの門をたたいた。恵まれた環境で学びを得る反面、思うこともあった。
「レードル一杯とかレシピに従って機械的に作るのは料理人ではないと思うのです。『こういう料理を食べたい』と言われた時に手持ちの材料、極端に言えば冷蔵庫にある材料で作れるのが料理人。偉そうです、よね?」
 と言って相好を崩す彼は、調理学校を修了後、思い描く料理人になるために埼玉県では知られたレストランに就職してデザートとパスタ場の補助を担当した。いきなりパスタを作らせてもらえるわけもなく、パスタの量を測るなどの下働き。その後、田町の店に移り、前菜やデザートを担当したのち、パスタ場を任される。
「130席もある店でパスタが常時10種類以上。ランチの90分で180人も来店し、パスタ工場のような感じで働いていました。しかも、パスタ場をずっと守ってきたシェフからポジションを譲られたため、プレッシャーも感じていました」
 期待に応えるべく、タクちゃんは寸暇を惜しんでパスタと向き合う。
「仕事終わりなど、少しでも時間があればパスタを作ってシェフやホールの人に食べてもらって感想を聞き続けました。パスタのことを深く学んだ時期でした」
 この時、身に付けたことの一つがソースの乳化である。
「水と油は本来、混ざり合わないものですが、混ざり合うのが乳化。そうするとパスタにソースがよく絡んでポタポタと滴り落ちたりしませんし、ねっとりというか、舌触りが滑らかになるんです」
 言葉にすると簡単に思えるが、経験のある方も多いだろうが、なかなかどうして難しい。量をこなして体で覚えるしかない。

▲いつもあるわけではないが、生パスタも試したいところ

🔳牛込柳町に降り立ったのは33歳の時

 続いて、ミシュラン1つ星レストランの営んでいたパスタ専門店でハーブの使い方をマスターし、もう1社をはさみ、学んできたことの中から自分に合ったものを活かす「イタリアンでパスタ中心」のプリモパッソを開いた。33歳のことだった。
「牛込柳町駅を利用したことはなく、土地勘ゼロ。夜になると人通りが絶えてしまうことに開店してから気づき、オープン当初はもっとリサーチすれば良かったと本当に思いました(笑)」
 来店者がゼロという日もあったが、ようやく軌道に乗ったのは3年目。地元の人々がランチやディナーを楽しんでくれるようになった。
 メニューを見ていると、あることに気づいた。パスタが充実している一方、思い出の一品、コトレッタが見当たらない。
「実は揚げ物を作るのはあまり好きではないんです(笑)。ただし、料理の道に進む前からアルデンテという言葉を知っているくらいパスタが好き。食べるのも作るのも好き。美味しいパスタをお客さんに食べていただきたいですし、パスタに関しては自身に課するハードルもかなり高いと思います。妥協はしたくない」
 そう、タクちゃんは丹精込めたパスタをいい状態で提供したいのだ。
「お客様が食べる時に最高の状態になるようにタイミングを計算しています。ですから、仕上がったパスタはもたもたせずにサーブしてほしいし、お客さんにはすぐに食べ始めてほしい。料理はフライパンから外した時から劣化が始まると言いますし……」

▲プリモパッソの内観

こういう話を聞くと「敷居が高いの?」と思われそうだが、そんなことはない。
「お酒を多く飲んでいる人と飲んでいない人では満足感も異なると思いますから、そういう状況を見ながら調整したりします。お年寄りの方にはパスタの硬さを聞いたり、量も尋ねたりします。美味しく食べられる量は人によって異なりますよね。アラカルトは、食材があればお好みの料理を作りますというスタンス。お客さんに楽しんでもらえれば、自分も楽しくなる」
 レシピよりも客に寄り添う料理を目指すタクちゃんは言う。
「総合力では高級レストランには及ばないかもしれません。上には上がいますが、パスタだけは競えるようにしたい。常に新しい素材にも挑戦して多くいる常連さんを満足させ、『パスタはプリモパッソだね』というお店でいたい」
 お客さんに「うまい」と思ってもらうために今日もパスタをゆで続ける。

 ありがとうございました!

▲料理と向き合うタクちゃんがあなたをもてなしてくれるはず


◎店舗情報
店舗名:プリモパッソ
最寄り駅:牛込柳町駅(都営地下鉄大江戸線)
営業時間:ランチ/1130~1500、ディナー/1800~2200(ラストオーダーは閉店1時間前)
定休日:日曜日
席数:20席(カウンター/4席、テーブル/16席)
禁煙・喫煙:全席禁煙
SNS:https://www.facebook.com/primopassoacquabocca/?locale2=ja_JPhttps://www.instagram.com/PrimoPasso2

人気かき氷店の店舗訪問リポートは以下より

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