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埼玉県吉川市にある居心地のいい居酒屋、よしだ家。季節に合わせて厳選された日本酒の数々と笑顔がすべての来店者を歓待!


埼玉県吉川市の繁盛店として知られている『よしだ家』。豊富な品ぞろえの日本酒と美味しい食事、そしてスタッフの温かい接客が来店者を魅了する。連載4回目は、主にホールを担当する吉田守・店長に話を聞いた。

🔳3割の売上減を乗り越えてオーナーへ

 いらっしゃい!

 神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県をぐるりと回るJR武蔵野線を吉川駅で降り、南口に向かうと吉川市(埼玉県)の特産であるなまずの黄金像に出迎えられる。『よしだ家』があるのは反対側、北口から数十秒の場所。看板を目印に2階へと階段を上がり、右手の扉を開くと明るい声が耳に飛び込んで来る。「居心地のいい店」と評判の同店を先頭に立って切り盛りするのが店長、吉田守さんである。

▲吉川市のランドマークと言える黄金のなまず


 吉田さんは大学進学のために生まれ育った新潟を離れて千葉へ赴き、卒業と同時に飲食チェーンの『株式会社大庄』に入社。飲食店でのバイトに楽しさを感じてはいたが、飲食業界を目指していたわけではない。新潟出身の方が会社説明会にいたこと、取得していた日商簿記1級が活かせるかなというのが動機だった。後年、同社の充実した独立制度を利用するとは露ほどにも思わなかった。

 順調にキャリアアップし、7年目に吉川市へ赴任。フランチャイズから直営に衣替えする店舗の社員店長として、だった。好調な売上を記録し続けたが、2年目に潮目が変わる。近くに新規店がオープンして3割も売上減。この出来事が人生の歯車を動かす。「売上を元に戻したら独立していい」と会社から打診された。
 当初は飲食店の開業など夢にも思っていなかった吉田さんだが、この頃には独立志向が頭の中を占めていた。将来設計に入りつつあった担当エリアの店舗を管理する職務にも魅力を感じなかった。同時に、スーツが好きでないという自己分析があり、数字をしっかり読める自分が切り盛りしたら結果は出せるという算段もあった。

▲板前さんが腕によりをかけた料理をぜひ楽しんでほしい


 3割減も大した障壁に見えなかったらしい。
「新規店が近くに出現すると、少なくとも3カ月は売上を引っ張られる(下げられる)という話を聞いていたこともあり、『これか!』という感じ。店が多い繁華街ならばそういうことはないのですが、吉川のようにお店の少ないエリアは強く影響されます。『多くの人が1回は行ってみようか』となりますよね。(今は)どうにもならないと思うようにしていました」
 やがて売上を回復させた吉田さんは退社し、数千万円の借金を背負って『やる気茶屋』のフランチャイズ・オーナーとなった。

🔳店頭販売を通じて酒屋を応援

 自分の城は人気店となり、借入額は順調に減っていったが、吉田さんの胸中にはある思いが湧き上がっていた。
 フランチャイズとは言え、ある程度の裁量権はあった。グランドメニューを置かなければいけなかったが、「おすすめ」などは吉田さんが決め、独自のサービスも導入した。お刺身の注文に対して「おまけ」をつけて客を満足させた。
「でも、日本酒は一年中飲めるものしか置けないという縛りもありました」
 チェーン店を運営する上で「縛り」は当たり前だとしても、吉川の飲食店コミュニティーに溶け込み、いろいろな個人店を訪れる過程で心が揺れ動く。
「お決まりのメニューが嫌になり、いろいろできる個人店に憧れを持つようになっていました。和食のお店なのだから、魅力的な日本酒を揃えたい。学び始めて種類の豊富さに驚き、春夏秋冬の食材に合わせた日本酒を置きたいと考えました」

▲いろいろな種類の席があり、いろいろな客層に対応できる


 2019年、フランチャイズから外れて店名を『よしだ家』に変えた。
 間もなく、右肩上がりの売上グラフは新型コロナウイルスによってへし折られた。急場をしのぎながら、吉田さんはお店を空けられない時期や時短営業時に店舗の前で日本酒を売り始めたが、わずかな売上が目的ではなかった。

「卸の酒屋さんに酒が溜まり続けているのに気づいた。このままでは酒屋や酒蔵が倒産してしまうと思い、店頭で少しでもさばいて消費の流れを生み出そうとしたのです」

 こうした行動の背景には吉田さんの経営理念、あるいは「おもてなしの心」がある。
「人助けが好きですし、仲間がいっぱい来てくれるのがいい。吉川には助け合いの雰囲気があり、飲食店同士も仲がいいですね」
「吉川には『はしご酒』の文化もあり、締めの店に決めていたお客さんを残念がらせたくなくて閉店時間が遅くなる(笑)」
「『1月1日もやっていてほしい』というお客さんもいるじゃないですか。それが分かるからなかなか休めない(笑)」
「お刺身におまけをつけたのは、原価が高くなっても魚の回転を良くして一本で仕入れたいから。お客さんのいろいろな要望にも一本の仕入れなら応えやすい。また、板前さんの能力を発揮してもらうためでもあります」

 よしだ家は、客、お酒、魚、地元の野菜を循環させるハブでもある。

▲吉田さんが選び抜いた日本酒が並ぶ

 
 新型コロナウイルスの5類移行と来店者のマスク率低下によって「ダメだな」というため息は出なくなった反面、23時以降の売上が戻らない。「回復しないかも」という不安もあるが、従業員を増やし、独立したい人をバックアップできる基盤を築くためにも吉田さんは「距離感」を大事にして客席を忙しく回る。

「アットホームな接客が個人店の魅力ですが、深く立ち入らないのがチェーン店。両方を知っている私は、話したがっているお客さんとは積極的に話しますが、距離感は大事にしたいと考えています。お馴染みさんばかりを大事にして優遇していると思われたくない。みんなに楽しんでほしいんです」
 こう言って笑う吉田さんは「家」に迎えるように人々を接遇する。

 客、業者、従業員、そして地域の人を笑顔にするよしだ家も吉川名物の一つかもしれない。

 ありがとうございました。

▲店長の吉田守さんとスタッフの方々


◎店舗情報
店舗名:よしだ家
住所:埼玉県吉川市木売1-7-2 泰有社吉川駅前ビル2階
アクセス:JR武蔵野線吉川駅北口より徒歩1分
営業時間:平日16:00~翌2:00/金・土・祝前16:00~翌3:00(ラストオーダーは閉店1時間前)
定休日:なし
席数:74席(座敷席、掘りごたつ席、カウンター席、ソファー席あり)
禁煙・喫煙:店内全面禁煙(店内に喫煙専用ブースあり)
SNS:https://www.instagram.com/yoshidaya_yoshikawa/

アースフードが食べられるKoruの訪問記事は以下より

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