ラーメン好きが高じて店舗をオープン。浦和レッズなどで活躍した盛田剛平さんが情熱を注いだ一杯は香り高いプロの一品だ。
■現役時代はラーメンで気分転換
いらっしゃい!
さいたま市北区で『盛田軒~もりたラーメン研究所~』を2023年3月5日から営む盛田剛平さんは元Jリーガー。1999年に浦和レッズに加入し、2017年にザスパクサツ群馬でユニフォームを脱ぐまで19年間、プレーし続けた。
現役時代は食に関するストレスを溜めないのが長い現役生活の秘訣だったという。中でもラーメン好きで知られ、同僚からはラーメン師範と呼ばれるほど。ラーメン店を開業するというセカンドキャリアは現役時代からあった。引退後はサッカー指導者として多忙な日々を送っていたが、ラーメン店をやらないで人生を終えたら後悔するという思いを持ち続けた。「サッカーの指導を疎かにしない。もちろん、ラーメンに対しても手を抜かない」という決意で指導生活を続けながら開店準備を進め、開店にこぎつけた。
現在の主力商品は「鶏白湯」。サンフレッチェ広島時代に『歩いていこう』というお店で味わった鶏白湯スープが強く記憶に残っていた。白湯スープの仕込みは簡単ではない。ミルクが入っているかと思わせるほどクリーミーで、癖がなくて鶏の旨味をストレートに味わえる一杯を提供するために日々、8時間以上もスープを炊き込む。麺はもちろん自家製麺だ。飲食店経営に乗り出した元プロ選手が自ら調理してサーブするケースはめずらしいが、自分でやらないと気が済まないと話す。
■SNSでの発信を強化して苦境から脱出
サッカー選手も店主も同様の個人事業主だが、選手は年俸を決めて契約し、出場給や勝利給がプラスされることはあっても、マイナスにはならない。しかしラーメン店は売り上げがなくても、材料費や家賃などの出費がかさむ。従業員の給料もある。2023年の夏に売上が落ち込み、銀行への返済もあって心が折れそうになった。誰よりもラーメンに対する思いが強いがため、逆にそれが「受け身」につながった。
19年の現役時代にも同じような曲がり角があった。30歳の時、出番を求めてFWからDFへのポジション変更を志願。大学ナンバーワンとも評されたFWが守備の選手となるのは心身ともに簡単ではないが、新人よりも序列が後ろの「1年目」と恥も外聞も捨てて教えを乞うた。プロ選手を続けたかったから、苦でもなかったことを思い出した。「ラーメン職人としては新米」がラーメン店を続けたいと思えば、アドバイスを得ながら進路を修正するのは当たり前のことだった。
転機は「いい物を提供すればいい」という思い込みを捨てたこと。お店のことを知ってもらい、来店して食べてもらわなければ始まらない。従業員の手助けを得ながら時間をやり繰りしてSNSでの発信を強化。選手時代にはメディアの評価も見ないようにしていたが、今はインターネット上の意見や評価に積極的に耳を傾ける。SNS上の見た目を意識して白湯スープをメレンゲのように泡立てると、麺との絡みが良くなる効果もあった。
▲店の奥で自家製麺をつくる(下段の左写真)
■もっとおいしくと自問自答
スープから立ち上がる期待以上の芳香に圧倒されることがある。選手時代と同じようにストイックにラーメンと向き合っているため、自己基準は常にクリアしているが、もっとおいしくできるかもと自問自答を繰り返す。一方、試合に自然に臨んだ時ほどプレーが良かった感覚もあり、「いつも通り」に調理できるようになりたい。それが、客が自然と足を運び、支えてくれる従業員も働きやすくなるという流れを生み出すという思いがあるからだ。
「悩みは尽きないが、楽しい」
そう話す表情には現役時代と同じく、プレーする楽しさとプロとしての厳しさが同居していた。
ありがとうございました!
▲盛田さんとスタッフのお二人
◎店舗情報
店舗名:盛田軒~もりたラーメン研究所~
住所:さいたま市北区宮原町2-16-2 新井マンション1F
アクセス:JR高崎線宮原駅東口より徒歩5分
営業時間:月 1030-1430/火&木&金&土 1030-1430&1700-2200/日曜日 1030-1530(ラストオーダーは閉店15分前)※木曜日は営業時間変更の可能性あり。SNSで要確認
定休日:水曜日
席数:17席(全席禁煙)
HP:https://moritakenmiyahara.wixsite.com/moritaken
SNS:https://www.instagram.com/moriken.rarmen/
※「埼玉県の居酒屋」に関する記事は以下より
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