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【インボイスの基礎知識⑧】優越的地位の濫用を知ろう! 「取引対価の引き下げ」を実例を挙げて解説


財務省は、2023年10月に開始された消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関し、事業者などから寄せられている質問、特に免税事業者やその取引先の対応に関する考え方をQ&A形式で解説している。制度への理解を深めるために紹介する。

■最終的には消費者にも悪影響を及ぼす

【インボイスの基礎知識⑦】で言及した「優越的地位の濫用」を具体例を挙げながら解説していきたい。今回は「取引対価の引下げ」を取り上げる。支配的な企業は、取引相手に対して価格を不当に低く設定するように強制し、相手の利益を損なうことがある。このような行為は、公正な競争を阻害し、市場の健全な発展を妨げるため、法律で規制されている。取引対価の引下げは、取引相手の経済的な負担を増加させ、最終的には消費者にも悪影響を及ぼす可能性があるからだ。
「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」では以下のようにある。

1:取引対価の引下げ
 取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施後の免税事業者との取引において、仕入税額控除ができないことを理由に、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉において、仕入税額控除が制限される分(注3)について、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。
 しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。
 また、取引上優越した地位にある事業者(買手)からの要請に応じて仕入先が免税事業者から課税事業者となった場合であって、その際、仕入先が納税義務を負うこととなる消費税分を勘案した取引価格の交渉が形式的なものにすぎず、著しく低い取引価格を設定した場合についても同様です。

免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A

 例えば、ある大手スーパーマーケットチェーンが小規模な農家から野菜を仕入れているとしよう。そして、このスーパーマーケットチェーンは市場での支配的な立場を利用して農家に対して野菜の価格を不当に低く設定して強要、農家は他に大きな販売先がないためにやむを得ず低価格で取引を続けた。このようなケースも優越的地位の濫用と言える。

※「中小企業診断士に聞く」に関する記事は以下より

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