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シェア型書店の可能性を示すコミュニティーの中身(@池上)


棚の借り賃を払って好きな本を好きな形で売るシェア型書店が増えている。書籍の販売だけでなく趣味嗜好に応じた空間利用の幅が広がる新業種の可能性は。池上の『BOOK STUDIO』を訪ねた。

■事務所内に「居場所」を作る

 採光の良い店内に並ぶ個性的な本とポップが目を引き、心地よいざわめきが店に広がる。来店者が台湾茶とかき氷を思い思いに楽しむ光景に、かつての書店のイメージはない。
『BOOK STUDIO』の開業は4年前。石井秀幸さんと野田亜木子さん(共にランドスケープデザイン事務所『スタジオテラ』)が事務所移転の際に、アベケイスケ(『Baobab Design Company』)さんに声をかけたのが発端だ。。共同オーナーとなった3人は単なるバックオフィスではなく、飲食などで人々が集まる空間にしたいと考えた。そこに人づてに紹介を受けたシェア型書店の発想が加わった。
 シェア型書店では、店舗内の一区画を借り受けた棚主がミニ書店を開業。運営形態は、出版社から新刊を仕入れるものから蔵書を売るものまで、店舗ごとに異なる。『BOOK STUDIO』は30人ほどの棚主が本棚の一区画を借りている。棚主は各々、売りたい本に自前のスリップをはさみ、好きな値段で売る。それは自分で制作した本でも、買い集めた趣味の本でもいい。売上の一部を経費として引く店舗もあるが、売上は全額、棚主に還元する。

■ワークショップを開催する当番

 シェア型書店が広がったきっかけはコロナウイルスの感染拡大だ。この業態に興味がある人は居場所を求めるように、店舗を回って自分に合った場所を探した。『BOOK STUDIO』は、他店同様、コロナ禍でつながりの大切さに気づいた人や何かをしなければと動いた人々が当初、棚主となった。コロナが収束する頃に抜ける人が現れ、人の入れ替わりがあったが、本をブリッジに気の合う人が今でも集う。「大事だと思ったのは運営が疲れない、無理しないこと。管理するものを最小限にしています」と石井さん。
 営業は金曜と土曜の週2日。店番のスケジュールは3カ月に1回ある「棚主会」で決める。必ずしも義務ではないが、店番になるとスペースを自由に使える。本の販売と合わせて、物づくりのワークショップ、台湾茶の振る舞い、読み聞かせなど、来客と交流する企画を開催することが可能となる。店番は新しい人とのつながりを生む接点だ。

▲棚主は30センチ四方の棚に思いを込めて本を並べる

■30センチ四方の可能性

 オーナーの実入りは棚の賃料だけだが、それでも家賃の足しにはなる。顧客もふくめた三方よしの仕組みができている。「棚を借りるだけではつまらないと思う。接客やワークショップを通じて自分をアピールするのがいいと思うんです」とアベさんは話す。
 4年の間には棚主の1人が書店を開業するといううれしい出来事もあった。「出会える場所やきっかけを提供できる場所になった」と石井さんが言えば、「僕らがすべてを担えるわけではないではありませんが、今後も人やまちの力になりたいと考えています」とアベさん。30センチ四方の小さな本棚が人を結ぶ新しい形態の店舗経営があった。

▲石井秀幸さん(左)とアベケイスケさん(右)

◎店舗情報
店舗名:BOOK STUDIO(ノミガワスタジオ)
住所:東京都大田区池上4-11-1
   第五朝日ビル1F ノミガワスタジオ内
アクセス:東急池上線池上駅より徒歩7分
営業日:金曜/1330〜1800、土曜/1230〜1800
HP(棚主希望):https://bookstudio.storeinfo.jp/
X(イベント情報): https://x.com/BookStudio_IKGM

※「新宿育ちのホップ」に関する記事は以下より

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