時計が正午を指す前に店周辺の人々で店内はいっぱい。秘訣は食材への徹底したこだわりとCPにある。
🔳地産地消の強いこだわり
いらっしゃい!
正午を過ぎると、階段を上がって店のドアを開く人が後を絶たない。光が差し込む店内は昼前にすでに満席。鶏のから揚げや豚の生姜焼きなど5種ほどから選べる里山定食、親子丼、カレーの3つの柱からなるランチメニューが手際良くサーブされる。客層は近所で働く男女で年齢層は幅広い。
実はこの店、隣のビルで電機設備事業を展開する株式会社国宏技研の社員食堂でもある。約70人の社員の福利厚生を目的に2023年6月、社屋の一部をリノベして1Fにカフェ、2Fに食堂を開いた。といっても隣のオフィスに常時いるのは20人ほどの社員。それ以外の顧客は武蔵野線北府中駅をはさんで西に広がる東芝工場の社員や隣の食品会社の社員らだ。店の裏手には保育園もあり、喫茶とともにおむすびも食べられる1階のカフェには子育て中の主婦も集う。「客層は狙い通り」と広報担当の岡村佳一さん。店を開設したもう一つの目的が、地域への恩返しと活性化だったからだ。
店のある北府中は東芝の町。北府中駅の乗降客の大多数が東芝の社員と関係者だ。一方で近隣には飲食店が少なく、線路と並行して南北に伸びる府中街道は交通量こそ多いが人通りはほとんどない。ランチで利用できる店も限られていて、国宏技研の社員も多くが仕出し弁当やコンビニを利用していた。まず社員の満足度を上げることが創業15年を迎える地域への恩返しにもつながるという着想からのオープンだった。ディナータイムには仕事が終わった東芝の社員たちが、充実したおつまみを肴に杯を傾けていく。
🔳ベテランシェフの着任も
地域貢献の発想は徹底した食材へのこだわりにも表れている。食堂のごはんとカフェで出すおむすびに使う米とコーヒーこそ京都の老舗からの仕入れだが、小笠原の島塩、江戸東京野菜、島しょ部の海苔から紅茶、抹茶まで東京産を使用。店の売り物である親子丼やだし巻卵に使うのは多摩産の卵だ。料理名にもこだわり、1階のカフェで出すのは、おにぎりではなく、「おむすび」。地域と人々との結びつきへの願いを込めた。
23年12月には東急系の一流ホテルのシェフなどで40年以上のキャリアを持つ笹木浩一さんが料理長に着任。和食に強かった前の料理長の作ったベースを活かしつつ、ソースや盛り付けなどに洋食のテイストを加味していくという。
経営する国宏技研はこの店舗をスタートに食品事業にも進出する計画で、フードロスやCP(コストパフォーマンス)を重視しながら店舗拡大や通販などで事業拡大を見通す。食堂でランチを頼むとプラス100円(価格はすべて税込み)で1階のコーヒーが飲めるという仕組みも、回転率を上げるのが一つの目的だ。おむすびと一緒に飲めるようにとブレンドされたコーヒーは癖がなく飲みやすい。しめて1000円という値段は味からすると、かなりリーズナブル。1階で食べられるおむすびも130gと食べ応えがあり、2個+おかず+味噌汁で650円。この価格ラインを保てるかがカギになりそうだ。
🔳繁盛するもう一つの理由は
こだわりは味だけではない。
「昼はずいぶん混んでいるのね。空いている時間は何時くらい?」
「昼時はいつもこんな感じですが、13時以降でしたら、もっとゆったりお過ごしになれるかと思います」
「そうですか。リピートさせてもらいますね」
「ありがとうございます。本日ここでお食事していただいたのも、ご縁ということで、またお会いできるのを楽しみにしております」
会計をするご婦人と店員のやりとりだ。ジョブトレの成果と岡村さんは言うが、気ぜわしいお昼時にかわす丁寧で感じの良いやりとりは、トレーニングだけでできるものではない。店員はみな笑顔で明るく、手際がいい。「飲食が好きという人に来てもらっています」と岡村さん。人が集まるもう一つの理由が分かる気がした。
ありがとうございました!
◎店舗情報
店舗名:ハレノヒ食堂
住所:東京都府中市晴見町2-16-29国宏ビル
アクセス:JR武蔵野線北府中駅徒歩1分
営業時間:1130~1400、1700~2100(365cafeは1100~1700)
定休日:土、日
席数:23席(365cafeは24席)/禁煙
駐車場:3台
HP:https://harenohi.tokyo/
※「福岡県にある飛行機雲の下のカフェバー」に関する記事は以下より
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