アジア最大級の蒸留酒のコンペティション『東京ウイスキー&スピリッツコンペティション』(以下、TWSC)の2023年度授賞式が6月29日、明治記念館(東京都港区)で開催された。2019年以来4年ぶりとなる授賞式では、前半は特別賞を受賞した企業を中心に表彰し、後半ではTWSCにおいては最高位に位置づけられる「ベスト・オブ・ザ・ベスト」を発表。各カテゴリーの頂点に立つ2023年度のボトルが決まった。
🔳コロナ禍にも挫けず、リモート審査で大会を継続
いらっしゃい!
2019年にスタートしたTWSCも新型コロナウイルスのパンデミックに翻弄されてきた。出品数も伸び悩み、集まっての審査などできる状態になかった。それでも賛同者の熱意に支えられ、リモート審査によって開催し続けた。2023年度もリモート審査は継続されたが、新型コロナウイルスが5類感染症に移行することが決まる中、会場探しに奔走して4年ぶりの授賞式開催にこぎつけた。
厳しい状況にもかかわらず、審査に妥協はなかった。全国に散らばる300人以上の審査員にボトルを配送し、審査員はブラインドで採点。テイスティング・ノートまで書く作業を3月と4月に実施し、TWSC本部が集計して各賞が決定されてきた。
土屋守・TWSC実行委員長は言う。
「いろいろな方々の協力がなかったらTWSCは、コロナ禍の中でとっくの昔にもしかしたらなくなっていたかもしれません。ウイスキーやスピリッツ、そして蒸留酒に寄せる熱い思いによって支えられて5回目を終えることができました」
▲ベスト・オブ・ザ・ベストにノミネートされたボトルの数々
🔳ベスト・オブ・ザ・ベストが選出される5部門
- アルコール度数25度以下の焼酎(12ボトル)
- アルコール度数26度以上の焼酎(24ボトル)
- ジャパニーズジン(10ボトル)
- ブレンデッドウイスキー(10ボトル)
- シングルモルト(20ボトル)
※()内の数字はノミネート数
🔳アルコール度数度25以下の焼酎部門
・受賞:『琥珀の夢』(薩摩酒造株式会社)
▲琥珀の夢/TWSC
本坊直也(薩摩酒造)さんの喜びの言葉を紹介しよう。
「琥珀の夢は1994年に発売され、30年ほどの歴史がある名柄ですが、スポットライトを最も浴びているのは今日ではないかと思います」
🔳アルコール度数26度以上の焼酎部門
・受賞:『天星宝醇 赤』(天星酒造株式会社)
▲天星宝醇 赤/TWSC
中原優(天星酒造)さんの受賞コメントを紹介しよう。
「(会社のある)大崎町菱田の特徴である超軟水を仕込みに使っております。酒質は口当たりのいい柔らかいタイプのお酒を作ることができております。創業122年になるのですが、10年ほど前に天星酒造と社名を変更し、全国はもとより鹿児島県内でも認知度が低いと感じております。受賞により、全国的に認知度が上がることを切に願っております」
🔳ジャパニーズジン部門
・受賞:『ザ・ハーバリスト ヤソジン オレンジ』(越後薬草蒸留所)
▲ザ・ハーバリスト ヤソジン オレンジ/TWSC
塚田和志(越後薬草)さんは製品誕生秘話を明かしながら喜んだ。
「主力事業は健康食品サプリメントを作ることですが、製造工程中に生まれるアルコールを活用し始め、スピリッツ製造免許を取得。2020年に発売したザ・ハーバリスト ヤソジンがTWSCという大きく、たくさんの商品が集まる中で受賞させていただき、本当に大変嬉しく思います。バーを愛する皆様、ジントニックを愛する皆様、ひとつまたよろしくお願いします」
▲受賞盾を手に誇らしげな表情を浮かべる塚田和志(写真左)さん
🔳ブレンデッドウイスキー部門
・受賞:『イチローズ モルト&グレーン ブレンデッドジャパニーズウイスキー リミテッドエディション 2023』(株式会社ベンチャーウイスキー)
▲イチローズ モルト&グレーン ブレンデッドジャパニーズウイスキー リミテッドエディション 2023/TWSC
吉川由美(ベンチャーウイスキー)さんは喜びを噛みしめながらも、抱負を口にした。
「ウイスキーに限らず、お酒作りは人が関わるものでもありますので、どういった人たちが作っているのかというのは非常に大事なことと思っています。また、今年は日本のウイスキー作り100年という大きな節目を迎えていると思っています。嬉しい時もまた苦しい時代も滞りなくウイスキー作りを続けてきてくださった方々がいらっしゃったからと心から感謝しています。来るウイスキーの200周年をお祝いする時、残念ながら私たちはその場所にはおりませんが、その時代を生きる人たちがお酒作り、ウイスキー作りの業界に対して夢を持って自分たちも仲間に加わりたい、ウイスキーの飲み手になりたいという時代を作っていけるように今私たちができることをすべてし、美味しいものを作るために邁進していきたいと日々、心から願っております。皆さんと一緒に良い時代を良い業界を作っていきたいと思っております」
▲吉川由美(写真左)さんは先人への感謝を述べた
🔳シングルモルト部門
・受賞:『カバラン ソリスト PX シェリー』(Kavalan Distillery)
▲カバラン ソリスト PX シェリー/TWSC
台湾より駆け付けた李玉鼎(リー・ユーディン/Kavalan)さんも感謝の意を示した。
「貴重な賞をいただき、光栄に思います。台湾にいらっしゃることがあれば、お声掛けください。蒸留所をご案内いたします。今後もよろしくお願いします」
▲李玉鼎(写真左)さんも駆け付けた甲斐があったというもの
閉会の挨拶をするために壇上に上がった土屋守・実行委員長は決意を新たにした。
「TWSCを作った時、1000本という出品目標を掲げました。第1回目には700本くらい。2回目からはコロナでそれどころではなくなりました。(5回目は920本で)1000というエントリー数には届いていません。それでも、次の5年間で『アジアから』、『日本から』、そして『東京から』世界に向けてアジアが誇る、あるいは世界が誇るスピリッツやウイスキー、ジンといったものをどんどん発信していきたい。我々は次の5年で『エントリー数3000』という目標を立てています。それに向かって動いていきたいと思います」
土屋委員長が、TWSCをより良い大会にすること、そして来場者に対する感謝を伝えて締めくくると、割れんばかりの握手に会場は包まれた。会場の中には栄誉を手にした人と逃した人たちがいたのは事実だが、歓談の時間や対面での対話を通じて誰もが大きな喜びと充実感を得たに違いない。そして喜びと充実感を来年に向けた意気込みへと変えて会場を後にしたように思う。
ありがとうございました!
▲土屋守・TWSC実行委員長/TWSC
🔳ウイスキー文化研究所とは?
ウイスキー文化研究所は、ウイスキー評論家の土屋守が代表を務めるウイスキー文化の普及団体です。2001年3月の発足以来、国内外のウイスキー・酒文化全般を深く学ぶべく研究を重ね、情報の収集および発信を行なっています。また業界に関わる方々とともに、ウイスキー愛好家や飲み手の育成、ウイスキー文化の普及を目的とした取り組みを企画・立案、実施してきました。
国内で唯一のウイスキー専門誌『Whisky Galore』の編集・発行、ウイスキーフェスティバルなどのイベントの企画・運営のほか、ウイスキーに関する知識、鑑定能力を問う資格認定制度「ウイスキーコニサー資格認定試験」やウイスキーを楽しむための知識を問う「ウイスキー検定」を主催しています。また、2019年より世界のウイスキーおよびスピリッツを審査する、日本で唯一の品評会「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)」も運営しています。
◎会社概要
社名:株式会社ウイスキー文化研究所
本社所在地:〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-10-5 テック広尾ビル5F
代表取締役:土屋守
事業内容:ウイスキーガロア編集発行/ウイスキーコニサー資格認定試験教本編集発行/ウイスキー関連書籍執筆、監修/ウイスキーフェスティバル企画・運営/ウイスキーコニサー資格認定試験企画・運営/ウイスキー検定運営/東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)運営/ウイスキーの製造アドバイス・技術指導
設立: 2001年3月
HP:https://scotchclub.org/
※『マレーシアフェア2023』に関する記事は以下より
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