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本格イタリアンから舵切り、地産野菜を使ったピザとパスタの人気店に成長した『toto』


栃木県那須郡の県道沿いのウッディーな空間は野菜たっぷりのピザとパスタの名店だ。地産地消というテーマを確かな味につなげている秘訣を尋ねてみると――。

🔳無理なくシンプルに

 いらっしゃい!

 おすすめの黒板に書かれた「やさいとベーコン」、「やさいとアンチョビ」といったメニューに店のコンセプトが表現されている。これ、ピザの種類。やさい、って言ってもいろいろあるけど――と思うはずだが、オーナー夫妻の村山類さん、佳奈子さんも次の食材を分かっていない。定期的に届く地域野菜の配送ボックスの中にある野菜から食材を選んで調理しているからだ。作るほうも食べるほうもわくわくする。それが栃木県北東部の那珂川町にある『toto(トト)』の売り物の一つだ。

▲ピザの一番人気は定番のマルゲリータ


 地産地消を掲げる店は多い。が、トトのテーマはシンプルで、できるだけオーガニックに、と無理がない。野菜など地域で生み出された食材を肩肘張らずに確かな腕と組み合わせで提供する。中心はピザとパスタ。ピザは生地に県内と北海道産の小麦粉を使用し、低温でゆっくり発酵させ、小麦のうまみを引き立たせている。パスタは「特別なことはしていません」。東京とイタリアで磨いた類さんの技術と経験で地産の食材をフルに活かす。その証によく出るメニューは定番のマルゲリータ。変わったところでは県内で取れるヤシオマスを使ったピザも人気作だ。

▲県産のヤシオマスを使ったピザの人気メニュー(左写真)。自家製ベーコンと同居する野菜も季節ごとに変わる。夏の終わりの一品


🔳「ソロ活」も開始へ

 開店14年を迎えるが、シンプルな展開に舵を切ったのは3年目だった。最初は本格イタリアンが売り物。前菜から始まりパスタ、メインの肉・魚料理をコースで出した。客層はミドルより上で、味は良く歓迎されたが、どうも地域とかみ合っていない印象もあった。8年前、長女の成長もあって週休2日にし、メニューもピザとパスタを軸に見直した。東日本大震災から数年、無農薬栽培で入植する若い世代が周囲に増えていた。地域の事業者が集まって「体にやさしい」というテーマでマルシェを実施。地産地消の循環が回り始める。

▲地元那珂川町の太軸なめこを使ったタリアテッレ(パスタの一種)


 キッチンカーで出張販売を始めたジェラートがSNSで評判になり、ピザ、パスタ、ジェラートの3本柱が固まった。「飲食はやるべきこととやりたいことのバランスが大事。割り切るところは割り切るという姿勢が、やるべきことを教えてくれました。最初に目指していた子供も来られるファミレスになれたかな」と佳奈子さん。ピザとパスタを2人でシェアできてそれぞれにジェラートがつくペアセット(3,700円、今月のピッツァにすると4,670円)、一人ずつオーダーできるライトセット(1,500円、+350円で今月のピッツァに変更可)などさまざまな組み合わせが選べる。最寄り駅から10キロ離れ、バス停からも歩いて30分以上かかる立地だが、近隣の名門ゴルフ場帰りにテイクアウトで立ち寄る遠方客も多い。

▲評判のジェラートには可愛いトッピングも人気


 誰にでも親しまれるように、とイタリアの男の子の愛称から名付けられた店のこれからの目標は、経営の効率化。現在のメニューを中心に、オーナーが前面に出なくても回していけるフローを確立し、ノウハウを地域の人々とともに共有して事業化する道筋を描く。その一つが類さんが県内の高根沢町で計画するイタリア料理店。6席ほどのカウンターが中心だがメニューは本格的に。イタリアでいうリストランテ(レストラン)とトラットリア(食堂)の中間を目指す。「本格的な料理を作りたくてうずうずしていた夫の、いわば『ソロ活』です(笑)」
 現在の店は閉店時間を早めるなど、ソロ活の準備は万端。11時から夕方まで、ペアセットなどの売り物を目当てに今日も県道を走って老若男女が集まってくる。

 ありがとうございました!

▲オーナー夫妻の村山類さんと佳菜子さん

◎店舗情報
店舗名:toto(トト)
住所:栃木県那須郡那珂川町谷田365
アクセス:県道294号沿い。最寄り駅はJR烏山線烏山駅
営業時間:1100~1800(イートインは1600まで、1500ラストオーダー。テイクアウトは1800まで)
定休日:日、月
席数:26席(禁煙)
SNS:https://www.instagram.com/pizza_gelato_toto/(インスタグラム)

※牛込柳町駅のイタリアンに関する記事は以下より

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