ピークとエンディングを意識して接客すれば、カスタマー・サティスファクションを高めることができるらしい。ノーベル賞を獲得した知の巨人が唱える『ピーク・エンドの法則』をマスターして集客力アップ&リピーター獲得を目指そう!
🔳接客ではピークと終了時を大切にする
いらっしゃい!
同窓会など、知り合いたちで集まって昔話に花が咲かした時、話が食い違ったり、覚えているシーンが違ったりすることは意外とよくある。人の記憶や印象というものは頼りないものであり、個人差が大きい。
では、次のケースを考えてほしい。
2人の患者が同じ処置を受けた。治療時間は患者A群が8分、患者B群が24分。両者とも全体としては同じような痛みを訴えたが、患者B群の治療時間は3倍であった(Kahneman, 2012)。
では治療後、治療に対してより悪い印象を抱いたのはどちらだったのか? 意外にも、患者A群だった。実は、患者Aの治療時間は患者Bよりも短かったが、短くしたために治療時間の終盤に痛みを感じるような治療が連続していた。判定基準のポイントは、治療時間の長短ではなく、終盤に痛みが連続したことだったのだ。
カーネマンの実験はピーク・エンドの法則の好例と言われている。患者B群は「全行程の痛みの総量は同じであっても、長い治療時間によって痛みの少ない時間帯を過ごして治療を終えられたために痛みが少ない印象を受けた」(Müller et al., 2019, p. 2)
ピーク・エンドの法則(peak-end rule)とは、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが1999年に発表したもの。あらゆる経験における苦楽は、イベントのピーク時と終了時の快苦の程度によって決まるという法則である(ピーク時の印象が残る時もあれば、終了時の印象が残ることもある)。
カーネマンは言う。
「数分であれ、一生であれ、私たちが本能的に重要視するのは、最も過酷な体験とその終わり方である。私たちは、ハイライトだけを思い出す傾向がある」(Kahneman, 2012)
ピーク・エンドの法則は、飲食店などの店舗事業でうまく活用できれば、リピーターを生み出す秘策になり得る。
レストランのケーススタディで活用法を学んでいこう。
🔳ケース①:特別なデザート
自分の誕生日を祝うためにレストランにやって来たあなたは、フレンドリーな出迎えを受けて歓待されていることを強く感じた。店内の雰囲気は温かくて居心地が良く、しかも美味しそうな料理の香りが店内には充満。気配りや知識が豊富な接客係にサポートされる至れり尽くせりの環境は素晴らしく、料理も抜群だった。しかも食事の最後には、あなたのためだけにシェフが用意した特別デザートがサーブされた。最後まで楽しい時間を過ごしてレストランを後にした。
🔳ケース②:アクシデントから挽回
素晴らしい雰囲気の中で食事をしていたが、食事の中盤、接客係がテーブルに水をこぼすハプニングに遭遇。大したことはなかったが、楽しい食事に水を差さされたのは事実だった。それでも無事に食事を終えると、お土産のビスケットと謝罪の気持ちが込められた手書きのメモをサプライズで渡された。さらにあなたは、温かい笑顔と感謝の気持ちにあふれたスタッフに見送られて店を後にした。
レストランに対する評価(印象)をピーク・エンドの法則に沿って考えてみよう。
ケース①では、素晴らしいサービスを受けていた顧客は特別なことをされなくても高評価をつけただろう。にもかかわらず、シェフが用意した特別デザートをサーブされるというピークによって顧客が最高の評価を与える可能性はさらに高まった。
ケース②では中盤に接客ミスに遭ったため、顧客が低い評価を与える、あるいはあまり良くない印象を抱くリスクもあった。しかしレストランは巻き返し策を懐に忍ばせていた。温かい気持ちにして顧客を送り出すこと(エンド)によって失地回復を狙った。
ケース①では、サービスのアベレージが高いレストランが、誕生日に訪れた顧客に対して意図的にピークを演出することによってポジティブな印象を強く抱くように促している。「(価格が)高いから美味しいし、サービスもいい」というある意味で当然なイメージに加えられたサプライズは大きなプラスを生み出すだろう。
ケース②では、レストランはマイナスをプラスにしなければならなかった。無論、水をこぼした直後に行動を起こしても良かった。エンド効果を狙うのは「いかにもあざとい」という見方も成り立つが、人間の心理面にはピーク・エンドの法則が効果を発揮するのも事実である。
心を込めたサービスが最善の策である。言うまでもなく、「帳尻を合わせればいい」と言いたいわけではない。それだけはご理解ください。
ありがとうございました!
参照:
https://positivepsychology.com/what-is-peak-end-theory/
https://www.nngroup.com/articles/peak-end-rule/
※集客力アップに関する豆知識に関する記事は以下より
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