店舗を開業する上で欠かせないのがテナントの確保であり、不動産に関する知識。この連載では、不動産業界で長く活躍するSAWASANが基本知識を紹介する。
■契約権を得るための権利金
テナントを借りる際には、いくつかの初期費用が必要になることをご存じですか? 賃料の未払いなどに備えて預ける敷金(賃料の4~10カ月分が相場)はよく知られていますが、契約時に大家さんにお礼として支払う礼金(1カ月分が相場)や契約時に賃料の1~2カ月分を支払う前払い賃料などもあります。今回から数回にわたって権利金と保証金を解説していきます。
1.定義
権利金:賃貸物件の借り手が貸し手に支払う一時金で、契約権を得るための対価
保証金:賃貸物件の借り手が賃貸契約の履行を保証するために支払う金銭で、契約終了後に返還されることが一般的
2.性質
権利金はその物件を借りる「権利」に対する対価であり、基本的に返還されない。一方、保証金は契約違反や物件の損傷に備えるためのもので、条件を満たせば返還される。
3.金額
権利金は一般に高額であることが多く、物件の人気や立地によって変動する。保証金は家賃の1~10カ月分が一般的だが、物件によって異なる。店舗や立地条件が良いものは、10カ月以上もあり得る。
4.内容
権利金は占有権を得るためのもので、新しい契約に伴い支払う必要がある。保証金は契約終了時のトラブル防止を目的とし、賃貸契約の持続中に存在する。
5.税金の扱い
権利金は譲渡所得として扱われ、課税対象となることがある。保証金は返還されるため、基本的に課税対象ではない。

6.返還条件
権利金は契約終了時に返還されないため、借り手に負担をかける。保証金は物件の状態が良い場合、全額または一部が返還される。
7.法的規制
権利金は法律で明確な規制は少ないが、不当な高額請求には注意が必要。保証金に関しては、法律によって返還条件が明確であり、借り手の権利が強い。
8.使用目的
権利金は賃貸物件の借り手が決定した場合の一時金として、契約の「締結」に利用される。保証金は賃貸契約中の「万一の保証」として機能する。
9.交渉の余地
権利金は通常、貸主と借主との交渉に基づくため、条件により変更が可能。保証金は賃貸契約の標準的な条件に基づくことが多く、交渉は限定的。
10.借り手のリスク
権利金は借り手にとって一定のリスクがあり、高額であるため、慎重な検討が必要。保証金はリスクが軽減され、契約終了後に返還が求められるため、借り手にとって安心感がある。
これらの点を理解しておくことで、賃貸契約を締結する際に必要な情報を把握し、適切な判断ができるようになるでしょう。ぜひ、お役立てください。
◆著者の取得資格◆
国土交通大臣、登録証明事業(3)第28034号、不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、宅地建物取引士(埼玉)第045713号、FPファイナンシャルプランナー第30220347号、賃貸不動産経営管理士(2)第020666号

※SAWASANの連載10回目コラムは以下より
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