御池(おいけ)通りに面する神泉苑(しんせんえん)から1分。アンティークな雰囲気の建物の4階に料理教室「Neoベジタリアン・クッキングスタジオ京都」はある。青いドアを開けると、ちょうど試食タイムの真っ最中。案内された席には、おいしそうなピザと温かいスープが並んでいた。
■子どものアトピーを機に完全菜食主義に
取材日のメニューは金柑と大根のピザに、サフランと山椒のスープ。ピザはさっくりした米粉生地に、白味噌と金柑を合わせたペースト、大根の食感がマッチしている。あっという間に平らげてしまった。
教室の主催者である東川恵里子さんは母親の影響もあり、食、特に無添加やオーガニックに高い関心を持って育った。自らの食を見つめなす契機となったのが、第一子のアトピー性皮膚炎。対策を模索する中で出会った「マクロビオティック望診法(ぼうしんほう)」を学び、完全な菜食主義(ヴィーガン)に転向すると、子どものアトピーも劇的に改善した。身をもって効果を実感するや、菜食で救われる人がたくさんいるのではと使命感を持ち、「恵里子のベジタリアンお料理教室」を立ち上げた。
■ベジタリアンが来ない、ベジタリアン教室
ベジタリアン料理を謳っているにもかかわらず、恵里子さんの料理教室にはベジタリアンの人はほとんど来なかった。「何なら肉が好き、みたいな人が、月に1回くらい体にいいもの食べようか、といった感じでした」。ただ初期の参加者が、自己紹介に際して、申し訳なさそうに「肉も食べています」と告白する姿が、心にずっと引っかかり続けていた。
そのような中、17年ぶりに第二子を妊娠。第一子の経験から、2人目は完全ヴィーガンでの出産に挑んだ。願いどおりアトピーではない子が生まれたものの、恵里子さんの回復は大幅に遅れた。入院生活が長引く中、元気を取り戻すきっかけとなったのが、夫が作った鶏ガラスープだった。それまでヴィーガンを貫いてきた恵里子さんだが、スープを食べたことで体がみるみる回復することを実感。初めて、生き物(動物)の命をいただくことの意味を納得できたという。さらにこのタイミングで閃いたのが、現在に続くNeoベジタリアンという“生き方”だった。
食の志向を表す「Neoベジタリアン」は、野菜中心の食事を基本にしつつ、自分の判断で肉や動物性食品も取り入れてもOKというスタンスだ。この考え方に行きついたことで、ベジタリアンではない受講生も「肉も食べます」と堂々と言える。また恵里子さん自身も、自由で前向きな食のスタイルこそ、自身が最も大切にしたいことだ、と気づくことができた。

■柔軟な活用法が好評の認定講座
教室は、2025年で11年目。料理教室では講座修了者に認定証(ディプロマ)を発行しており、「認定Neoベジタリアン指導士」を名乗ることができる。その後はNeoベジタリアン料理教室を開くことも、自分の店でメニューとしてレシピを活用することも可能だ。料理教室で学んだ人が、そのレシピを使ったメニューを提供することはもちろん、レシピにアレンジを加えても「Neoベジタリアン」と名乗ってよいことにしている。ただしレシピの利用には各講座料金(税込105,600円)に含まれるライセンス料が必要だ。単発コースの場合は別途44,000円(税込)になるが、いずれも活用のルールはとても柔軟だ。
この方針に至った理由は、恵里子さんが「10人いたら10人のネオベジがあっていい」と考えているからだ。Neoベジタリアンの認定指導士になるということは「ネオベジ」という考え方を、人生の一部に取り込むことを意味するので、その人の解釈と料理があっていいし、使い方も自由でいいと考えている。

■垣根なく誰もが集える場所を作りたい
これまでに講座を受講した人はのべ3,000人。生徒は全国からやってくる。飲食店の経営者やオーナー、スタッフの受講も多い。レシピのライセンスが含まれ、習った料理を商用利用できる講座はメリットも大きく、使い勝手がよいと好評だ。
今後考えていることを尋ねると、Neoベジタリアンの思想の下、「出入り自由で、誰もがウェルカムなあたたかい場所づくりに取り組んでみたい」と目を輝かせた。最新のキッチンと調理器具があり、庭で、部屋で、誰かが誰かを思いやる料理を作って提供する。どのような人でも受け入れて、一緒に過ごせる場所づくりが、Neoベジタリアンの次なる目標だ。

※「Neoベジタリアン」は登録商標です(登録商標第5751760号)
※本文内の価格は、2025年3月現在のものです。
◎店舗情報
店舗名:Neoベジタリアン・クッキングスタジオ京都(社名:一般社団法人Neoベジタリアン)
住所:〒604-8381 京都市中京区西ノ京職司町67-15 1/8 bldg 4階
アクセス:京都市営地下鉄「二条城前」駅から徒歩5分、JR「二条駅」から徒歩10分、市バス・京都バス バス停「神泉苑」から徒歩1分
SNS:www.instagram.com/neoveg_erico/(インスタグラム)
HP:https://neovege.com/
※「アレルギーのある人でもOKの商品」に関する記事は以下より
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