東京都練馬区の憩いの場、石神井公園に続く商店街に出来た路傍の花のような店。温かな空間で香り高いコーヒーをはさんだ女性店主との会話を楽しんでみては。
🔳「おかえり」と言える店目指して
いらっしゃい！
店名はスペイン語で「橋」。店に近い石神井公園にある「眼鏡橋」にちなみ、人と人、人と地域の架け橋のような存在になりたいという願いを込めて、苅部加代子さん（44）が2023年の10月初めに開いた。
池袋から急行で10分弱。石神井公園駅の南口を出て公園方面に向かう商店街に店はある。周囲は昭和から営業する珈琲店や町中華などがある下町風情。そんな道端にそっと咲く花のような存在がプエンテだ。
ガラス戸を引くと、打ちっぱなしの店内を間接照明が照らす柔らかな空間が広がる。アーチ状のカウンターは眼鏡橋がモチーフ。「10数年前に結婚して移り住んでから、この商店街の方々には子供たちに『おかえり』と声をかけていただくなどして、地域に育てられた実感があった。そんな顔が見える店で地域とつながれれば」と苅部さんは言う。
出版社勤務の夫との間で一男二女を育てる苅部さんが、開店を思い立ったのは４年ほど前。国分寺でコーヒーなどのオーガニック品を扱う量り売り店『nue by totoya』を訪ねたことと、家族旅行で出かけたハワイで廃棄物のペットボトルをひれにはさんで泳いでいるイルカの姿を目にしたことがきっかけだ。ハワイでは日本でまだなじみのなかったエコラップの存在も知った。それまで見て見ぬふりをしていた環境汚染の問題を考え始めたころに、国分寺の店が開く量り売りの研修にも足を運んだ。
🔳地元民から「こんな店を待っていた」と好評
そんな２つの体験から、環境保護につながるパッケージフリーを包装不要の量り売りで実現しつつ、コーヒーを間に対話ができる店という像が浮かんだ。
「チェーン店のコーヒーを当たり前に飲んでいると、『こんなもの』という感覚になってしまうけど、丁寧に焙煎したコーヒーの美味しさを知ると、その感覚が変わる。えらそうですが、専門的なこだわりがなかった私自身がそうでした。環境問題も同じで、気づいて知ることがすべての原点だと思いました」
知り合いから、輸入豆を50度のお湯で洗ってから焙煎するアームズメソッドという方式を教えられた。オーガニックの豆は生産地や輸入時に虫やカビが付着しやすい。現地の水を入れ替えることが衛生強化につながり、洗浄して湿った状態で焙煎することで豆に甘味が出る。冷めてもアイスコーヒーにしてもえぐみがなくおいしい。安心安全と美味しさを両立できる方式が、栄養士の資格を持つ苅部さんの腹にすっと落ちた。アームズメソッドの主宰者に教えを請い、焙煎を学んだ。
オーガニック、パッケージフリー、フェアトレードというポリシーに沿った品ぞろえの店を開こうと、自治体の補助金を申請した。商店街に空き店舗も見つかった。設計は自宅マンションのリノベを担当してくれた同姓の建築家に。改装は家族や友人の手を借りた。手作りで出来上がった店内には、2種のコーヒー豆のほかハーブティー、チョコレート、ドライフルーツ、スパイス、ナッツに加えて醤油、酢、調味料が並ぶ。雑貨もふくめてオーガニックとパッケージフリーが基本。店内にはプラスティックは存在しない。
ヴィーガンの焼き菓子などハンドメイドの日替わりスイーツもあり、6席ほどでイートインも可能。水蒸気焙煎によるコーヒーの量り売りとカフェスタイルを兼ねた店は都内でも数少ないという。
「ついつい私がしゃべりすぎてしまって。でもただものを売るだけでなく、どういう考え方でやっているかを伝えたい、とカフェスペースを作りました。このあたりはテイクアウトの店が少なく、公園に出かける家族がターゲットだったのですが、『こういう店が近所に欲しかった』という地域のみなさんに来ていただいています」
上は高校生、下は小学生の子育てをしながらの営業なので16時半まで。女性の働き方を自ら提言するような場としても活用していきたいと話す。「店を大きくする将来は描いていません。いまの感じのまま、ワークショップなどコミュニケーションの場としての機会を広げていければ」
肩肘はらずに環境についても考えられる空間へのガラス戸は、いつでもすこしだけ空けられている。
ありがとうございました！
◎店舗情報
店舗名：PUENTE zerowaste shop＆cafe
住所：練馬区石神井町3－18－8
アクセス：西武池袋線石神井公園駅から徒歩4分
営業時間：0930～1630
定休日：日、月
席数：6席
喫煙・禁煙：禁煙
SNS：https://www.instagram.com/puente_zerowaste.cafe/（インスタグラム）
※直火式焙煎コーヒーに関する記事は以下より
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