店舗の集客・開業支援メディアサイト

店舗訪問

新宿育ちのホップが、人々の思いのこもったクラフト・ビールに生まれ変わる


1日に60万人以上が乗車するというJR新宿駅と巨大バスターミナルに隣接する『NEWoMan新宿』。多くの人が訪れる商業施設でホップが栽培されていた。ホップを中心に紡がれた物語を紹介する。

🔳都会の貸し出し農園に芽吹くホップ

 いらっしゃい!

 JR新宿駅前にそびえる『JR新宿ミライナタワー』の中にある商業施設、『NEWoMan新宿』(株式会社ルミネが運営)は外観、集まる人々、そして入るテナントまですべてがオシャレ。その華やかなイメージの陰で、NEWoMan新宿育ちのホップがビールに生まれ変わっているのを知る人は少ないだろう。関わった人々の汗と涙が詰まった『SHINJUKU HOP PROJECT』の最終章を紹介する。
 2021年の立ち上げから参画している内田将吾さんは振り返る。
「ファッションやカルチャーに関してNEWoMan新宿は独自色を出せたと思うのですが、地元である新宿とのつながりが希薄と感じた。でも、新型コロナウイルス禍で売り上げが落ち込んだ時に支えて下さったのは日頃、新宿を利用する方々。個人的にコロナ禍を経験して『手触り感のある運営』の必要性を一層、感じましたし、地域で活躍する方々と新宿エリアを盛り上げたいという機運が社内で高まったんです」

▲『NEWoMan新宿』でのホップ栽培風景


 地域との数少ない接点だったのが7階にあった貸し出し農園だ。折しも空き区画が生まれ、「育てたホップでビールを作って地域と連携している例もある」という農園の運営会社から聞いた話を参考に、プロジェクトは走り出した。21年は樽詰め醸造にこぎ着け、22年には瓶ビールとして成果物を関係者と共有できた。さらに最終年の23年2月、内田さんと同僚の峯村莉奈さんが味と雰囲気に魅了された『YYG Brewery & Beer Kitchen』の上野雄也さんに醸造を依頼。地域への思いは上野さんも同じだった。
「うちは気取った店構えですが(笑)、近所の方々が気軽に寄ってくれるお店。コロナ禍では常連さんに本当に助けていただいたので。実は、クライアントワークはあまり好きではないんですが、メールの文面とかで思いって伝わるじゃいないですか。2人はしっかりしているし、可愛げもあった(笑)。頑張ろうかな、という気持ちにさせられるんですよ」
 少し年上の上野さんが経緯を振り返ると、「勝手にお兄さんと呼ばせてもらっています(笑)」と2人の声が弾んだ。

▲2023年生まれ、新宿育ちのホップ


🔳ビールのラベルに込められた関係者の思い

 地域の人々がビールを楽しむために集まる同店を通じて、地域との関係性が強まることになったが、通常業務をこなしながらの栽培は一筋縄ではいかない。猛暑も災いした。
「いろいろとありすぎました……。猛暑でうまく育ちませんでしたし、虫の被害もありました。サステナブルと言うのは簡単ですが、コントロールできないことばかりで『どうして雨が降ってくれないの!』と悩んだり(笑)。ちょっと恥ずかしいのですが、パソコンに向かっているだけでは分からないことをたくさん学べました」(峯村さん)
 ある時、マスキングテープを片手にオフィスを出る後輩の峯村さんを追いかけ、ホップの一部を植えていたJR新宿駅に向かった内田さんは驚いた。峯村さんが、ぐるぐる巻きにしたマスキングテープでアブラムシと格闘していたのだ。ホップは、JR新宿駅の駅員さんの協力も得て育てていた。

▲9月19日に行なわれた試飲会の様子


 予想外の苦労を味わいつつも、ビールの味決め、収穫、そして醸造にこぎつけた。
「7月3日に味を決め、完成試飲会は9月19日です」と峯村さんが空で唱えると内田さんと上野さんはさすがにあっけにとられた。
 試飲会に並んだのは2つのボトル。会話を楽しみながら誰もが飲める『セッションビール』と酸味の強いコーヒーと掛け合わせたマニアックなビールを参加者が口に含んだ。経験を積んできた上野さんにとっても緊張のひと時だった。
「酸味が強いからだけではなく、すごい衝撃を受けました」と峯村さんが言えば、「飲みやすいだけでなく、味わったことがない美味しさを感じました」と内田さんは話し、涙したことを告白。2人は、気恥ずかしさを隠すように大きく笑った。

▲新宿生まれのホップがビールとなり、人々の思いをまとった(Photo by Hideyuki Akata)


 3年計画の最終章で完成した1500本の瓶ビールは、多くの関係者の尽力の結晶だ。
「家と職場の往復だけだとしんどいので、立ち寄ってマインドをリセットできる場所が重要だと思う。つながりのあるそういう場所がたくさんあるエリアは素敵ですよね」
 と言う内田さんの思いは峯村さんと上野さんにも通じ、新宿を行き交う人々の思いを代弁している。
 ビールのラベルには舞台になった新宿の街並み、そして関わった人々が描かれている。3人、そして関わった方々が描いていく「絵」は今後、もっと大きくなり、大勢の人が登場するより豊かなものになっていくのだろう。

 ありがとうございました!

▲プロジェクトを代表して話を聞いた3人

◎店舗情報
店舗名:NEWoMan新宿
住所:東京都新宿区新宿4丁目1-6
アクセス:JR各線「新宿駅」ミライナタワー改札・甲州街道改札・新南改札方面
営業時間:
【ファッションフロア】月~土/1100~2030&日・祝日/1100~2000
【エキナカ】(フード)月~土/0800~2100&日・祝日/0800~2030(スイーツ)月~土/0900~2100&日・祝日/0900~2030
HP:https://www.newoman.jp/shinjuku/

※「映えるフルーツサンド」に関する記事は以下より

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

RELATED

PAGE TOP