前回は「お金が回らなくなること」を防ぐことが最も大切であること、そして、「貯金+入金-出金>0」という式でお店のお金の状況を把握できることをお伝えしました。今回は、この3つのお金の動きを管理するツールとなる「資金繰り表」について、お話したいと思います。
決算書だけでは、お金の流れが見えにくい
事業を続けていくためには、「お金が流れている」ことが必要です。しかし、毎年の決算書(損益計算書、貸借対照表)だけを見ていても、この「お金の流れ」は見えてきません。それはなぜでしょうか?
理由は大きく3つあります。1つ目の理由は、決算書は1年に1回、決算時点の状況しかわからないから。年度末には黒字でも、その途中でお金が足りなくなることもあり得ます。1年に1回の健康診断だけでは、日々の体調管理まではできないことと同じです。
2つ目に、お金が入ってくる時期と出ていく時期はズレることがあるから。例えば、12月に宴会料理を提供しても、請求書払いなら実際の入金は1月になることがあります。しかし、食材の仕入代金は12月中に支払わなければなりません。このズレが、お金が足りなくなる原因になりえます。
3つ目は、決算書に「その年に動いていないお金」が記載されたり、「動いているのに記載されないお金」があるから。設備を購入した場合、決算書には減価償却費として数年に分けて計上されますが、支払うお金は買った時に一括で出ていきます。また、借入金の返済は決算書の利益計算には入りませんが、お金は確実に出ていきます。
大事なことは、お金が「いつ」「いくら」入るのか、出ていくのか、その流れを常にわかるようにしておくことです。そのために役立つツールが「資金繰り表」となります。
日々のお金の流れを見えるようにする「資金繰り表」
資金繰り表とは、お金の入りと出を時系列で記録し、手元に残る現金がいくらになるかを把握するための表です。前回お伝えした「貯金+入金-出金>0」を、毎月チェックできるようにしたものと考えてください。基本的な構成は、
①前月からの繰越金(=貯金)
②今月の入金(売上、借入など)
③今月の出金(仕入、人件費、家賃など)
④翌月への繰越金(=貯金+入金-出金)
となります。
記入する際のポイントは、「実際にお金が動いたタイミング」で記録することです。現金で売上があった場合は、その日に「入金」として記録します。請求書を発行して後日振込になる場合(売掛金)は、実際に振り込まれた日に「入金」として記録します。
仕入についても同様です。現金で食材を購入した場合はその日に「出金」、後払い(買掛金)の場合は実際に支払った日に「出金」として記録します。この「現金売上と売掛金」「現金仕入と買掛金」のタイミングの違いに注意することが、資金繰り表を正しく作るポイントです。
資金繰り表のひな形は、日本政策金融公庫のウェブサイトから無料でダウンロードできます。エクセル形式になっていますので、比較的とりかかりやすいと思います。現在資金繰り表を作成されていない方は、ぜひ一度やってみてください。
まずは、日々のお金の流れを「記録」することから始めよう
資金繰り表の作り方を聞いて、「大変そうだ」と思われた方もいるかもしれません。しかし、一番のポイントは「コツコツと記録をする習慣づけができるか」です。毎日は難しくても、週に1回、もしくは月に1回でも構いません。まずは記録をつけ続けることから始めてみてください。
記録が溜まっていくと、今のお金の流れが見えるようになります。そして、今の流れが見えるようになると、将来についても一定の想定ができるようになります。「来月は家賃と仕入の支払いが重なるから、現金が足りなくなりそうだ」と事前にわかれば、金融機関に相談したり、支払い時期を調整したりと、対策を立てることができ、選択肢も広がりますし、心に余裕も生まれます。
前回お伝えした通り、3つのお金の中で最も管理しやすいのが「出金」です。次回は、この「出金の管理」について、飲食店で特に重要な仕入管理を中心に、より詳しくお伝えしていきます。

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