店舗訪問

【店舗訪問 『創作洋食ハチロク』(東京都・板橋区板橋)】「やるべきことを徹底的に明確にする」ことでエリアナンバーワンの人気を誇るレストラン&バー風居酒屋へ


開店時間は18時から翌3時まで。板橋区の路地裏で美味しい料理と楽しい会話を提供して多くの客の心をつかみ続ける店がある。ワンオペで人気店を切り盛りする「人たらし」シェフにコツを聞いた。

■あか抜けない板橋に生まれた繁盛店

 JR埼京線で新宿駅から2駅10分、池袋駅からは一駅3分という好立地にありながらどこか「昭和のオヤジの町」感が抜けない板橋駅界隈。その路地裏に、20代~40代の女性客を中心に若者たちで深夜まで賑わう洒落た店、『創作洋食ハチロク』はある。
 18時の開店から22時頃まではカップルや家族連れ、そしてグループ客がしっかりと食事を楽しむ洋食レストラン。それを越えて深夜3時までは食事とともに約60種類のお酒が楽しめる。約65種類あるメニューは「どれも美味しい」と評判。すべての料理を作りながら客との会話を盛り上げるオーナーシェフ、森鉄雄さんの「人たらし」ぶりも人気だ。


 開業は7年前。当時32歳で初めて自分の店を持った若きシェフは何を考えていたのか?
「初めての店だから、すべてに目が届く10坪程度の店をやりたかった。19歳から経験してきた6店舗のいいとこ取りをして、エリアの他店に絶対に負けない店をつくろうと考えました」

■コンセプトは「ネイチャーとケミカルの融合」

 シェフが経験してきたのは、銀座のフレンチに始まり恵比寿の居酒屋、南青山のバーなど。20代に入ると将来の独立を考え始め、約10年間準備した。たどり着いた約9坪の小さな店には、隅々までシェフの「成功戦略」が張りめぐらされている。

 狭い空間を広く見せるために、壁は打ちっぱなし。客席の天井も取り払った。入り口の上には約2メートルのテント廂を張り、暖色系のLEDを灯して遠くからでも店が分かるようにした。開店当初の閉店時間は早朝5時。近隣にはない「朝まで営業」でアピールした(コロナ禍以降3時閉店に)。小ぢんまりした調理空間にはコンロが3つ、オーブンが一つ。コンベクションオーブンはない。だが、わずか一歩ですべての食材や調味料、皿、コップ等が手に取れるように数センチ単位で配置にこだわった。



 料理のコンセプトも独特。自分の名前「木(森)と鉄(鉄雄)」から「ネイチャーとケミカルの融合」を目指す。食材を吟味し、労も惜しまない。
 例えば、タマネギやセロリ等「ミルポワ」と呼ばれる香味野菜は自分で仕込み、丁寧に炒めて料理に自然の甘みを加える。ラムのモモ肉も自分でスジや脂分を掃除してからカットする。トリッパ(牛の胃袋)も3、4回煮こぼして圧力釜で煮込む。ミートボールに使う豚肉は、業者に荒挽きしてもらうが脂の量を指定する。ソースは手作りで常時10種類用意し、さらにお客さんの好みや料理の種類によって味を調整する。
 そうやって生まれる「ザ・ラムカツ」(1480円)や「トリッパの激辛トマト煮込み」(780円)、「マグロとアボガドの揚げ春巻き」(780円)、「庄内豚の粗挽きミートボール」(880円)などはいずれも人気メニューだ。
 なお、原価率は平均で32%前後。目玉料理によっては8割近い品もある。

■修業した店舗の長所をいいとこ取り

 細部までこだわる一方、独りよがりにはならない。
「徹底したのは『やりたいことよりやるべきことを明確に』。それ以前に経験した6店舗や他店舗の人気メニューから『売れる』『人気の』アイデアをもらいました」
 シェフはやるべきことを徹底して限られた状況での「限界値」を究めようとしている。無理をするとコストが合わない。体力がもたない。結果的にお客さまの満足を得られない。店を持続できない。
「8割の力で持続可能にする。ほどよく自分を許すことが大事です」



 それでも開店以来、客単価は3000円から4000、さらに5000円へと少しずつ上昇してきた。狭さを味方にしてきた。
「すべての席の会話が僕の耳に入る広さだからお客さんを把握できる」
 月あたりの700人から1000人の客をシェフとサービス担当のアルバイト1人で回してきたが、新展開を迎える。

「5月から厨房に1人入れます。お客さんだった地元の子で、調理師学校を出ていて気が合うので僕がスカウトしました。彼に料理から経営からすべてを教え、その先に支店の展開も考えていきます」
美食と美酒、そして笑顔にあふれる店内の温かい雰囲気は大きなガラス窓を通して店外でも感じられる。もちろん、シェフの戦略の一つだ。
 今後も楽しませてくれそうな店が板橋にある。

◎店舗情報
店名:創作洋食ハチロク
住所:板橋区板橋1-13-2
アクセス:JR埼京線板橋駅「東口」徒歩5分、都営三田線「新板橋」徒歩8分
開業時間:月~土曜日(18時から27時。ラストオーダーは26時)
定休日:日曜日、月曜日(不定休)
席数:カウンター4席、テーブル14席
HP:https://hachiroku.jp/
電話:03-6909-6229

※「北海道産の日本酒にこだわった店」に関する記事は以下より

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

RELATED

PAGE TOP