コラム

22.お金が回らなくなる時〜お店を続けるための数字の基本①〜:中小企業診断士が語る、店舗事業者が知っておくべき基礎知識

第15回から第21回まで、マーケティングの基本的な考え方についてお伝えしてきました。しかし、どんなに素晴らしい施策を企画しても、お金の管理ができていなければ、お店を続けることはできません。今回からは、お店を続けるために最も大切な「お金」を中心とした数字の話をしていきます。

お店を続けることができなくなる時

「お店を続けるために一番大切なことは何ですか?」と聞かれたら、皆さんは何と答えるでしょうか。「おいしい料理を作ること」「お客様に喜んでもらうこと」など、色々な答えがあると思います。

しかし、経営者として絶対に忘れてはいけないことがあります。それは「お金が回らなくなったら、お店は続けられない」という事実です。少し厳しい話に聞こえるかもしれませんが、自ら事業を営む経営者だからこそ、このことを頭の片隅に入れておいていただきたいと思います。 

「お客さんが来てくれない」「決算が赤字になった」など、厳しい状況は色々ありますが、最も深刻なのは「支払うべきお金を支払えなくなった時」です。極端な話、毎日赤字だったとしても、手元に現金があれば事業を続けることはできます。逆に言えば、どんなに評判のよいお店でも、お金の管理を怠れば続けられなくなるリスクがあるのです。

「貯金+入金-出金>0」なら続けることができる

それでは、「お金が回らなくなる」とは、具体的にどういう状態か。それを「貯金+入金-出金>0」という式にして考えてみましょう。「今持っているお金=貯金に、今月入ってくるお金=入金を足して、今月出ていくお金=出金を引いた時に、マイナスにならなければお店は続けられる」という意味です。

例えば、手元の現金50万円、今月の売上が80万円、支払いが100万円なら、「50万円+80万円-100万円=30万円」でまだプラスです。今月は赤字(20万円)ですが、お店は続けられます。しかし、これ=20万円の赤字が3か月続くと、「30万円⇒10万円⇒マイナス10万円」となり、3か月目で支払いができなくなります。

数字に苦手意識を持っている方も、

①今月の出金(≒支払)はいくらですか?
②今、手元に現金はいくらありますか?
③今月の入金(≒売上)はいくらですか?

最低限、この3つの数字を毎月把握できているだけでも、お店のお金の状況を理解することができます。

3つの数字をどのように管理していくか?

「貯金」「入金」「出金」の3つには「管理しやすい順番」があります。

【最も管理しやすい:①出金の管理】

まず管理すべきは出金です。理由は、出ていくお金は「自分たちである程度コントロールできる」からです。家賃や光熱費はほぼ固定、人件費は売上に応じて一定の調整可能です。特に飲食店で重要なのが「仕入」の管理。食材の発注量や在庫管理で無駄を減らし、廃棄ロスを抑えること等がポイントです。

【次に管理しやすい:②貯金の管理】

手元のお金に余裕があれば、入金や出金が見込通りに行かなくても、すぐに困ることはありません。目安は「月の出金額の3~6か月分」です。毎月100万円の出金なら、300~600万円の現金があると安心です。実際にはそれだけの余裕を持つことは難しいかもしれませんが、少しでも積んでおきましょう。

【最も管理が難しい:③入金の管理】

最も予測が難しいのが入金、つまり「お客様が来てくれるかどうか」です。天候や季節で変動するため、完全にコントロールできません。だからこそ、マーケティングが重要になります。そして、入金が不安定だからこそ、出金と貯金をしっかり管理することで、経営を安定させることができます。

 

今回は「貯金+入金-出金>0」という式と、3つの数字の管理についてお伝えしました。正しい会計知識には苦手意識があったとしても、まずはこの3つを把握できているか確認してみましょう。次回は、この3つの数字の管理について、どう考え、どう管理していけばよいか、1つずつ、さらに掘り下げていきたいと思います。

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中小企業診断士

株式会社ワークライフスポーツ 代表取締役 稲垣秀行 事業者の方が「強く、やさしく、おもしろい」お仕事ができるよう、頭の中の整理から、事業計画の作成、その後のフォローまで伴走型でサポート。市役所の窓口相談では年間150者ほどの方からの経営相談を受けている。スポーツによる街の活性化がライフワーク。

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