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【商売繁盛】飲食店の目的は満腹になることだけ? 違う! 飲食店の集客に必要なのは、客の求めに応えること‼


なぜ、人は歯ブラシを買うのだろうか? 当たり前のことすぎて考えたこともないかもしれないが、この質問に対する答えを考えることが事業を成功に導く上で大切なのだ。「歯ブラシ」をあなたの事業に合わせて置き換えながら読んでほしい。

🔳ドリルを買った人が欲しいのはドリル?

 いらっしゃい!

「顧客が欲しいのは4分の1インチのドリルではない。4分の1インチの穴が欲しいのだ」

 唐突な始まり方に「どういうこと?」と思う方も多いかもしれないが、マーケティング界隈ではよく使われているフレーズである。店舗事業でも集客力やカスタマー・サティスファクションを高める上で役に立つ考え方だ。

 ハーバード・ビジネススクールで名誉教授を務めた故セオドア・レビット(1925-2006)は1960年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』にて『マーケティング・マイオピア』という概念を発表。直訳すれば、「マーケティングにおける近眼」という具合になるが、近視眼的マーケティングのほうがしっくりくるだろう。近視眼的マーケティングとは、簡単に言えば目先の利益ばかりを見て経営判断を下し、長期的な視点に立っていないことを指す。

 冒頭の言葉は、マーケティングの本質を突いているとして知れ渡ったレビットのものである。

 彼が概念を発表した当時、第二次世界の軍需輸送に応えて大きく発展した米国の鉄道会社が衰退期に入っていた。戦争が終わっても、旅客と貨物輸送の需要が減っておらず、旅客数と貨物輸送の需要は依然として増え続けていたにもかかわらずだ。

 レビットは、鉄道が衰退し、危機的状況に陥ったのは自動車、トラック、航空機など、鉄道以外の手段に旅客などを奪われたためと分析。鉄道会社が自らを「移動手段の会社」と定義せず、「古き良き鉄道」にこだわって顧客の要求を満たすことを放棄したためと結論付けた。旅客が求めたのは鉄道(旅行)ではなく、移動(無論、鉄道旅行を求める旅客も中にはいる)。集客力や競争力が低下するのは当たり前だった。

🔳イーストマン・コダック社が破綻した理由

 米国の『イーストマン・コダック』(1892年設立)の例も紹介しておこう。

 若い方々は知らないかもしれないが、コダックはカメラ、レンズ、フィルム(下写真)などを扱う世界最大の写真用品メーカーとしてその名を世にとどろかせていた。1975年には次世代に向け、世界初のデジタルカメラも生み出していた。しかし世界で初めてカラーフィルムを売り出したことを誇るフィルム事業の収益を脅かしかねないデジタルカメラの販売に注力しなかった。そしてユーザーがデジタルカメラへとどんどん乗り換えていく中、キャッチアップできないまま2012年に経営破綻を迎える。顧客が求めたのはフィルムではなく、写真自体や写真を撮影することだったのだ。

▲すっかり目にする機会が減った写真撮影用のフィルム(luriko-yamaguchi/Pexels)

 冒頭のフレーズは、事業者が注視すべきは製品そのものではなく、製品がもたらす最終的な結果や利益だと言っている。つまり事業者は、顧客の興味が向いているのは道具そのもの(ドリル)ではなく、道具がもたらす結果や解決策(穴)に興味があると理解すべきと指摘しているのだ。

 この概念を理解すると、事業者は顧客の動機と欲求に対応しやすくなる。製品の特徴やスペックだけをアピールするのではなく、顧客のニーズをどのように満たし、問題を解決するかを中心にアピールすることで購買意欲を掻き立てられるのだ。むしろ顧客のニーズ(結果や解決策)を満たせるように商品やサービスを設計する必要がある。

 また、「なぜ、人々が4分の1インチの穴を欲しがるのか?」と考えることも有益だ。例えば、絵画を飾りたい、棚を設置したい、DIYをしたい、などなどいろいろあるだろうが、顧客の動機を理解することで特定のニーズに対するソリューションとして製品やサービスを位置づけられる(カスタマイズできる)。

 レビットの言葉を現代風に換言すれば、「顧客中心主義の重要性を強調している」となるだろう。顧客を中心に据えられれば、得られるベネフィットを強調できるように製品やサービスを開発し、そのベネフィットを強調する広告を打つことによって顧客との強いつながりが構築でき、顧客満足度とロイヤルティーを向上させられるのだ。

▲「家族団らんのひと時」の食事の楽しさの一つ(national-cancer-institute/Unsplash)

🔳空腹を満たすためだけに食べるわけではない⁉

 飲食業であればどうだろう?

「人々が求めるのは空腹を満たすことではない。美味しい料理、楽しい食事体験を求めているのだ」と言えるかもしれない(とりあえず空腹を満たしたい時もある)。

『ホットペッパーグルメ外食総研』が2019年に発表した「外食は食費? レジャー費? 外食の『レジャー性』への期待と予算を調査」の結果を一部紹介しよう。

Q:外食に対して「お腹を満たす」以外で期待していることは?

  • 1位 時短ニーズの「料理する手間を省く」:58.3%
  • 2位 「非日常感やレジャー性を楽しむ」が49.2%
  • 3位 「食事相手やお店のスタッフなどとのコミュニケーションや会話」が48.4%
  • 4位 「同行者の満足感」が46.2%

 この結果から伺えるのは、食べることが主因だとしても、楽しみや喜びも飲食店を訪れる大きな動機になり得るということ。となれば、飲食店を経営する上では味だけでなく雰囲気、サービス、プレゼンテーションなど、総合的な食事体験を考慮する必要がある。雰囲気に限定しても、ロマンティックなディナーを優先する人や活気とエネルギッシュな雰囲気を求める人など、嗜好は多岐にわたる。言うまでもなく、バーベキューと高級レストランで求められるものは異なるはずだ。立地に合わせたり、特定の顧客の好みに合わせたりして差別化を図り、顧客との強い結びつきを生んで集客力アップを目指してもいい。

 大切なのは「顧客が求めているもの」を追求することである。

 歯ブラシが欲しいのではなく欲しいのは白い歯、マッサージして欲しいのではなく欲しいのは心地良さや健康な体……。当然と言えば当然のことだ。

 ありがとうございました!

参照:
https://blogs.ubc.ca/marvinamm/2011/09/26/people-dont-want-to-buy-a-quarter-inch-drill-they-want-a-quarter-inch-hole/
https://hbr.org/2006/10/what-business-are-you-in-classic-advice-from-theodore-levitt
https://blog.hubspot.com/marketing/marketing-myopia
https://www.hotpepper.jp/ggs/research/article/column/20190221

※店舗訪問『プリモパッソ』に関する記事は以下より

https://omisenogakkou.site/primo_passo/

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