日本におけるセールやバーゲンと言えば、「●%オフ」というのが主流だろう。しかし、米国では事情がやや異なる。特売の際にはBOGOFという文言を見聞きする回数が多いらしい。BOGOFはどのようなものであり、集客力と売上をアップするのだろうか?
🔳売上高を下げることなく顧客に満足感を与える販促
いらっしゃい!
BOGO(ボゴ)、あるいはBOGOF(ボゴフ)と呼ばれる販促キャンペーンをご存じだろうか? 「Buy One, Get One Free」の頭文字をとったものであり、基本的な考え方は「1つ買えば、1つただでもらえる」という販売促進手法である(バリエーションは多数)。
米国のマーケティング・コンサルティング会社、『Convince&Convert』が行なった調査では、「約93%が年に1回はBOGOFを利用している」となった。米国では日本よりも一般的に行なわれているため、こうした結果になったとも言える。ちなみに日本では、2012年から2020年まで某ピザチェーンが実施していたものがよく知られている。
BOGOFは目新しい戦略ではない。始まりは1721年と言われている。博物学者のリチャード・ブラッドレーが著した『A Philosophical Account of Works of Nature』は7冊買うと1冊無料だった。そして1920年に『プロクター・アンド・ギャンブル』(P&G)がBOGOSを用いた結果、広く知られるようになった。
▲「無料」という言葉には不思議な力があるようだ
エコノミストのダン・アリエリーはBOGOFの効能を次のように解説する。
「何かが『無料』になった時、私たちは過度に興奮し、理性的な思考をしなくなる」
「無料」という文字を目にした客は購買意欲を強くかき立てられる。「割引よりも無料に人は惹かれる」というリサーチもある。しかもBOGOFは期間限定となっていることが多く、客は「今、買わなきゃ損」と心理的に急かされるのだ。
事業者には会計上のメリットもある。
顧客にお得感と満足感を与えつつ、売上高を下げることなく在庫を整理できるのだ。
例えば、1000円の商品を「①50%割引」、「②1個買ったら1個無料」で販売したところ、10人が購入したとしよう。
①「500円×10個」で売上高は5,000円
②「1000円×10個(実際は20個)」で売上高は10,000円
①の場合も②の場合も1個あたりの売価は500円(「5,000円÷10」と「10,000円÷20」)。であるから、事業者とすれば、売上高が倍になる②のほうがいい(仕入値も倍になっている点は要注意)。「50%割引にしたら20個以上売れる」という確信があるならば、話は違う。
▲BOGOFを自社サービスに活用する方法を考えてみてはいかが?
🔳ブランド価値を極力棄損せずに在庫調整
ブランド価値を棄損しづらいのもメリット。ある商品を50%引きで売ってしまえば、「それくらいの価値しかない」という印象を顧客に与え、以降、元の値段で売ることは難しくなる。そうしたことを避けつつ、販売のバリエーションを増やせるのだ。
いずれにしても、BOGOFは売上高を落とさずに在庫を整理したい時に有効な手法と言っていい。
「いつもは使わない商品」を試してもらう上でも有効になり得る。
化粧品メーカーであれば、プレミアム・リップグロスを購入するとアイシャドウを無料で提供といった組み合わせで潜在的顧客にアプローチできる。つまり、アイシャドウ利用者には高いリップを試してもらえ、高いリップをいつも購入している人にはアイシャドウを試してもらえるかもしれない。
🔳バリエーション
・Buy 3, Get 1Free(3つ買ったら1つただ)
・Buy One, Get One 50% Off
・Buy A, Get B Free
最後に、米国ではなぜBOOGFが一般的なのか?
「割引を計算するのが面倒と考える人が多い」という意見がある一方、「フェアネス(公正)の結果」という意見もある。簡単に言ってしまうと米国では、「●日以内は価格が下がらない」とレシートなどに明示されていることも少なくなく、日本のように簡単に値を下げられず、しかも元の値段で購入した人から返却されるリスクに晒されるそうなのだ。
BOGOFにも日本と米国における商慣習の違いが見とれる。また日本でも、BOGOFがすべての商品や店舗事業に活用できるわけではないだろう。とは言え、汎用性の高い販売促進手法でもあるため、検討してみてもいいだろう。
ありがとうございました!
参照:
https://www.talon.one/blog/modernizing-the-classic-buy-one-get-one-free-deal
https://www.voucherify.io/glossary/bogo
https://www.talon.one/blog/modernizing-the-classic-buy-one-get-one-free-deal
https://clark.com/shopping-retail/publix-bogo-policy/
※『ザイアンス効果』の記事は以下より
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