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「あったらいいな」に応える35歳女将のこだわりの中身(@福岡)


店舗は年季が入っているが、切り盛りするのは30代の若女将だ。修行時代はテキ屋から繁盛店までさまざまな経験を積み、たどり着いたのは自分がされてうれしいことというコンセプト。毎日更新するメニューの食材を求めて、今日も自転車を繰る。

■蕎麦打ちも売り物に

 西鉄平尾駅から徒歩約15分。夜は人通りも少なくひっそりとした清川の住宅街。その一角の古びた建物に22時、明かりが灯る。しばらくすると、ひとり、またひとりと店の中に吸い込まれていく。
『咲のおいとま』を切り盛りするのは女将の藤田咲さん。女将といっても年齢は35歳と若い。蕎麦屋で修行したこともあって蕎麦も打つ、こだわりの店だ。
 店がオープンしたのは2022年の七夕。女将の誕生日でもある。高校時代から、夢は自分の店を持つことだった。剣道に打ち込みながら、将来はフレンチたこ焼きの店を海外で出したいという漠然とした夢を見ていた。
 高校卒業したあとは、料理の専門学校へ行きながらフレンチの店でアルバイトをし、夏限定ではあるがテキ屋の門をたたき、博多の三大祭『放生会(ほうじょうや)』や大濠公園の花火大会の露天でたこ焼きを焼いていたという。
 専門学校の有名店などのシェフや料理人が講義をする授業で出会った蕎麦屋の大将の料理への向き合い方に衝撃を受け、専門学校を卒業後、その大将の弟子になった。修行は5年半。料理や蕎麦の打ち方はもちろん、接客、おもてなしの精神、生花についても教えてもらった。

▲木目のカウンター席は、連日朝までにぎわう


■当たり前のレベルが急上昇

 その後、勉強のために焼鳥屋やカレー屋、ラーメン屋のアルバイトを掛け持ち。特に焼鳥屋は地元密着型で従業員とお客さんがまるで家族のようだった。「自分が将来お店を持つとしたらこんな感じにしたい」と自分のやりたい方向性が見えたという。
 2年のアルバイト生活を経て、今度は正社員として雑誌にもよく取り上げられる炉端焼きの店で修行する。
 繁盛店だけあってより高いレベルの料理の技術、知識、接客が要求された。しかし、この店での経験によって料理や接客に妥協しない信念が芽生え、自分の考えていた「当たり前のレベル」の基準が格段に上がったという。

▲開店当初から人気の「シンプルニラ玉」


 そんな時、よく行くお店のお客さんから今の店舗が空くことを聞いた。築58年と年季の入った店だったが、代々飲食店だったこともあり設備は整っており、食器などもそのまま使っていいという。
「貯金はほとんどなかったんですが、知り合いの方から福岡市のスタートアップ支援が利用できることを知り、その制度を使って100万円を借りました」
 内装は、たまたま知り合いが店舗専門の内装屋をはじめたいとのことで、お金はいらないから練習させてくれとの申し出があり、材料費45万円だけで内装工事をしてもらった。

■日本酒も自分で仕入れ

 店のコンセプトは「あったらいいながある店」「自分がされてうれしいこと」だという。「店のオープン時間が夜10時なのもそのためです。飲食の仕事って終わるのが遅いけど、仕事終わってから食事やお酒が楽しめる店って少ない。早い時間は選択肢が豊富ですが、遅い時間は少ない。だから、そういう人たちが楽しめる店にしたかったんです」
 営業時間が22時から翌朝6時までというのはそのためだ。
 料理は家庭料理がメインだが、食材の業者などとは契約しておらず、毎日様々なスーパーに出向いて買い揃える。その日の特売品や旬のものを取り入れて毎日メニューを更新する。ビールは酒屋に頼んでいるが、日本酒は自分で買い揃える。だから買い出しに使う自転車は前後のカゴつきだ。

▲「おいとまセット」。蕎麦湯で作っている豚汁は具だくさん


 もうひとつのこだわりはワンオペで店を回すこと。一応、ひとり毎日アルバイトに入ってもらっているが、そのアルバイトがいなければ店が回らないようにはしない。ワンオペで店が回せれば人手不足が生じないからだ。
 オープン当初から売上はほとんど変動しないのが強味だ。多いときは1日に15万円を超えることもあるが、平均するとだいたい1日に4~5万円程度。「お金には執着してなくて、心を込めて料理を作ってお客様と接すれば、お金はあとからついてくると思っています」
 お客さんに満足してもらう料理やお酒を提供するため、今日も女将は大きなカゴがついた自転車に乗ってスーパーを回る。

▲蕎麦は新鮮さを保つため開店直前に打つ


◎店舗情報
店舗名:咲のおいとま
営業時間:22時~翌6時
住所:〒810-0005 福岡県福岡市中央区清川3-15-1
定休日:木曜日及び不定休で月2日ほど
SNS:https://www.instagram.com/sakinooitoma.kiyokawastairu7.7/(Instagram)

※蒲田の『お茶の間バー そら豆」の記事は以下より

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