コラム

14.売上利益計画について考えてみるー中小企業診断士が語る、店舗事業者が知っておくべき基礎知識

これまでご紹介してきた小規模事業者持続化補助金の第17回の公募が正式に開始されました。締切は6月13日(金)17:00ということで、このコラム公開時(24年5月29日)時点では、応募される皆さまはまさに事業計画書作成の真っ只中というところかと思います。

今回は、そんな皆さま向けに、特に苦労される方が多い「売上・利益計画」の立て方について、ポイントをお伝えしていこうと思います。

「数字に弱い」と思っている方、実は違うんです

色々な事業者の方とお話しすると「私は数字に弱くて」と言われる方によく出会います。ただ、よくよくお話を聞くと、この「数字が弱い」という言葉の裏にある「本当の原因」は、どうも数字以外のところにあると考えるようになりました。私が考える苦手意識の理由は大きく次の3点です。

数字情報を記録して持っていない

そもそも、日々の売上や費用に関する情報を都度記録して管理していない方。こうした方は数字が苦手ではなく、「数字情報を持っていないので使えないことが問題なので、今日からでもよいので毎日記録をしてみること。ここが最初の一歩になりますね。1か月もすれば色々と見えてくると思います。

未来の数字を「予測しよう」と考えている

売上・利益計画の数字は「未来」についての考えるものです。この時、「未来の数字を予測しよう」と考える方がいますが、今のような環境変化が激しい時代だと「未来のことなんか予測できない」と思い手が止まってしまいがちです。

実際、未来のことを正確に予測することは不可能です。ですから、未来のことを予測する必要はなく、「3年後にはこうなっていたい」という希望や目標を数字で明確化した上で、「どうすればこの目標を達成できるか」という「未来から逆算して考える」意識を持ってみましょう。

事業コンセプト(誰に、何を、どのように)がぼんやりしている

売上計画を見ると「現状から毎年10%成長させる」と、明確な根拠がわからない記載も多くみられます。これは「誰に売るのか?⇒何人に来てほしいのか」、「何を売るのか?⇒1人いくらくらいお金をいただくのか」というコンセプトの部分が具体的に考えられていないことが多いです。

例えば、「新商品を単価1,000円で平均1日10食、月稼働22日で販売する」というように考えると「1,000円×10食×22日=22,000円/月」と具体的に示すことができるようになります。

売上・利益計画を作成する際のポイント

以上を踏まえて、売上・利益については、以下の点を確認して計画づくりをしてみましょう。

売上を「客単価✕客数」に分解してみよう

売上高は「客単価✕客数」に分解してみましょう。月の売上高と購入客数がわかれば、客単価は「売上高÷購入客数」で計算できます。この分解だけでも「客単価を上げていきたいか」「お客さんの数を増やしたいか」、今後の計画でどちらを進めていくかの検討を、数字を使いながら行うことができます。

原価を把握して、商品・メニューごとの「粗利」を確認できていますか?

商品ごとの原価を把握していますか?飲食店の場合、原価率30%程度というのが一つの目安ですが、自分のお店がどうなのか確認してみましょう。食品の場合は廃棄率についても考慮してみましょう。

仮に立てた数値計画とマーケティング計画をつなげて考えよう

立てた数値計画の納得度を高めるためには、マーケティング(製品、価格、販路、販促)計画と連動していることが重要になります。実際の行動の結果を数値で評価する。行動と数値がきちんとつなげて考えることができているかどうかを確認するようにしましょう。

補助金に限らず、数字への苦手意識を減らし、日々の経営状況について数字で把握できるようにしておくことは、事業を円滑に進める上で非常に大切です。日々の記録は手間のかかる作業ですが、これらはPOSレジなどデジタルツールで効率よくできるようになっています。これらの導入にはIT導入補助金なども活用できます。情報管理の質を高めて、数値計画づくりに役立てていきましょう。

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中小企業診断士

株式会社ワークライフスポーツ 代表取締役 稲垣秀行 事業者の方が「強く、やさしく、おもしろい」お仕事ができるよう、頭の中の整理から、事業計画の作成、その後のフォローまで伴走型でサポート。市役所の窓口相談では年間150者ほどの方からの経営相談を受けている。スポーツによる街の活性化がライフワーク。

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